ロボットカーは日産とNASAの共同開発で生まれる

写真提供:日産




それは、空を飛ぶ何万という飛行機を遠くから管理し、空の状況を観察している航空管制官になぞらえることもできるだろう。SAMは複数のカメラ、LIDARテクノロジー、レーザー航路ファインダー、ミリ波レーダーをはじめとするシステムを搭載することで、社会とのスムーズな交流を実現する。

ペデルセン博士は、社会の中でどこまで協調的になれるか、それが最大の問題だと言う。「たとえば、交差点には信号があり、横断する歩行者、自転車、真っ先に動こうとするクルマがいますよね。それを総合的に判断することは人間にはむずかしいことではない。でも、ロボットにはとてもむずかしいのです」

ロボットは、社会に受け入れらえるように人間と交流する方法を学ばなくてはならない。それができないと、周囲の人間はロボットを避けようとして危険な運転をしてしまうだろうから。周りの人に迷惑な行動をしないことが、もっとも重要。丁寧過ぎも、のろ過ぎるのも、ためらい過ぎも社会的に迷惑で、許されない。

こんな場面を思い浮かべてみよう。道路が工事中で、現場の係員は通れと合図するが、信号は赤い。ロボットはどう反応するだろう?

ドライバーは日常的にこんな場面に遭遇するが、深く考えることもなく瞬時に判断を下している。ロボットカーも同じように動いてくれることが最も重要だ。そのために、ロボットカーが人間に指示をもらえるオプションを用意しておく。

それは悪意のないビッグ・ブラザーのような監視システム。複雑な状況をどう乗り切るべきか指示を出すために、常に自動運転車がどこを走行しているか、支援を求めているかを把握している。これを管理するのが人間だ。

自動運転の車両が走行中に障害物を察知すると、遠隔地にいても人間の管理者は、車両がどのルートを走ったら障害をさけられるか指示する。AIはその情報をどの車両にも転送するので、次は人間に指示されなくても、すべての自動運転車両が的確なルートを取るようになる。



日産はすでにこのようなシステムを日本の高速道路でテストしていると、ペデルセン博士は言う。ただし、高速道路には信号も歩行者もなく、どのクルマも同じ方向に進んでいる。シリコンバレーでの使命は、信号もあり、歩行者も自転車・クルマもあらゆる方向に動く複雑な状況で対応できるようにすることだ。

日産の最終目標は、完全にスムーズなモビリティ・システムを構築することだ。将来は、このシステムが何万という車両を管理して、自動運転車両のためのより大きな交通の生態系を作るだろう。このようなテクノロジーは将来、ロボ・タクシーやロボ・デリバリー、ロボ・シャトルやロボ・シェアリングなどのサービスに用いられる。

その時は確実にやってくる。僕たちが思っているよりも早く。NASAのパートナーとしての共同開発プロジェクトによって、日産のインテリジェント・モビリティはさまざまな技術的ハードルを乗り越え、自動運転車が人間のために社会を変貌させるだろう。

それは、ジェームズ・キャメロンの映画のような世界も知れない。とてつもない恩恵がある一方で、恐ろしさもある。近い将来、便利な自動運転タクシーを利用したいと思っている人がたくさんいるのは知っているけど、ちょっと気になることもある。

……もしもピッツァのデリバリーが無人だったら、誰がドアまで届けてくれるのだろう?

国際モータージャーナリスト、ピーター・ライオンが語るクルマの話
「ライオンのひと吠え」 過去記事はこちら>>

文=ピーター・ライオン

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