ビジネス

2018.01.19

中国に歩み寄るフェイスブックらが直面する「厳しい現実」

マーク・ザッカーバーグ(Photo by Justin Sullivan/Getty Images)

フェイスブックは1月9日、中国のスマホメーカー「シャオミ(小米)」と提携し、VRヘッドセットを中国の消費者向けに発売すると発表した。「Mi VR Standalone」と呼ばれるこのデバイスは中国限定で販売される。

このヘッドセットにはフェイスブック傘下の「オキュラス」のロゴがプリントされており、2009年から中国での利用を禁止されたフェイスブックにとっては、中国市場への再参入を記念する製品になる。マーク・ザッカーバーグは以前、大気汚染の激しい北京でマスク無しでジョギングをするなどのパフォーマンスで、中国市場への意欲をアピールしていた。

一方でグーグルも昨年末にアジア地域では初となるAI(人工知能)の研究所を北京に開設すると宣言し、地元の研究者らと共同でリサーチを行うと発表した。中国政府は2030年までにAI分野で世界のリーダーになるとの目標を掲げており、中国のAI産業はその頃には1500億ドルの価値を持つようになると述べている。

現地のアナリストは「中国政府はAIなどの新たなテクノロジーを、海外から呼び込もうとしている」と述べた。

ただし、ビジネス面で考えると中国市場の先行きは不透明だ。2017年の第3四半期に、中国では10万8000台のVRヘッドセットが出荷されたが、「HTC」のような国際ブランドや中国の「DPVR」や「Pico」といった現地企業が顧客を奪い合っている状態だ。中国でSNS事業を展開できていないフェイスブックが、低価格競争の市場でどこまでアピール可能かは分からない。

「フェイスブックはオキュラスリフトの低価格版の『オキュラスGo』を投入し、顧客層を広げたいと願っている。しかし、彼らのコア事業であるフェイスブックが禁止されている中国で支持を得られるかどうかは疑問だ」と現地の専門家は話した。

一方でグーグルも今回の取り組みで利益を得られるかどうかは不明確だ。さしあたって、北京でのAI研究所の開設は世界で最も人口の多い国で、マシンラーニングに必要な巨大なデータを得ることにはつながると思える。しかし、そこから先の未来がどうなるかは分からない。

目先の利益は度外視の米国企業

アップルは近年、中国政府に歩み寄る姿勢を見せており、中国にR&D拠点を設けることも宣言した。しかし、iBooksやiTunes動画等の多くのサービスは依然として中国ではブロックされているのが実情なのだ。また、米国政府も中国のテクノロジー企業に先端技術を盗まれてしまう危険に神経を尖らせている。

それでもなお、米国のテック企業は中国進出をやめる訳にいかない事情がある。中国経済は成長を続けており、彼らにとって中国は非常に魅力的な市場だ。自動車産業やロボティックス分野では、中国政府は自国の産業保護に躍起になっているが、先端的テクノロジー分野ではまだチャンスが残されている。

北京大学教授のJeffrey Towsonは次のように述べた。「中国のテクノロジー企業は米国企業の技術に関心を持っている。米国の企業たちは、厳しい状況の中でもなんとかして中国市場に入り込みたいと願っている」

編集=上田裕資

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