調査企業「NPD Bookscan」によると、イヴァンカの著書「Women Who Work(働く女性)」は2017年5月に出版されて年末までに3万1900冊が売れた。女性が社会生活と仕事の両面で成功するためのアドバイスが書かれているこの本は、およそ110万ドル(約1億2200万円)を売り上げたことになる。
Portfolioには56万6000ドルの入金があるが、同社はイヴァンカに78万7500ドルを支払う予定になっている。フォーブスが出版の専門家と共に試算したところ、Portfolioの赤字は22万ドル(約2400万円)以上になりそうだ。同社にコメントを求めたが、返事はない。
出版社は著名人の本の出版するにあたり、前払い金を支払うのが一般的だ。通例では売上のおよそ15%を前払い金に充てる。イヴァンカの場合は本が20万1923冊売れないと、前払い金を払えない計算になる。専門家はフォーブスの取材に「これは大赤字だ」と話した。
「Women Who Work」はイヴァンカにとって2冊目の著書だ。彼女は2009年にはサイモン&シュスター傘下の小さな出版社から「The Trump Card(トランプ・カード)」という自伝も出版しており、評価は賛否両論だった。2冊目についてペンギン・ランダムハウスは“大統領の娘”という肩書で売上を伸ばそうと考えたのかもしれないが、こちらも賛否両論だった。
また、トランプ大統領は女性や社会のマイノリティにとって不利な政策を推し進めており、イヴァンカはそれに加担したとの批判も浴びていることも、本が売れない原因になった。
さらに、イヴァンカは政権内で大統領補佐官というポジションを得ており、利益相反になる恐れがあるからか、自身の本を宣伝することはなかった。また、彼女はこの本の利益をほぼ全て寄付するとしている。イヴァンカはすでに前払い金から合計20万ドルを全米都市同盟とボーイズ・アンド・ガールズ・クラブ・オブ・アメリカに寄付している。
しかし、ペンギン・ランダムハウスにとっては、彼女の寄付などどうでもいい話だ。出版系ニュースサイト「Publisher’s Weekly」の報道では、同社の2016年の売上は前年度比9.6%減の36億ドル(約4000億円)だった。