スーパーボウルは、マーケティングの場として非常に効果的だ。米国内視聴者数は1億人を超え、米国最大のメディアイベントとなっている。第2位のアカデミー賞授賞式でさえ、2017年の視聴者数はたった3000万人だった。
さらに重要なのは、スーパーボウルがとてつもなく大きな話題を呼ぶことだ。スーパーボウルの広告は、試合前から試合中、試合後、試合の次の日まで人々の話題に上り続け、フェイスブックなどのソーシャルメディアで共有される。広告について語ることを目的にスーパーボウルを視聴する人も多い。
これには膨大な対価が必要だ。スーパーボウルの広告料は30秒でおよそ500万ドル(約5億5000万円)。それに加え、広告主は突出する創造的な作品を作り上げ、イベント後には広報(PR)やデジタル、プロモーション、コンテストなど、統合マーケティング戦略を展開しなければならない。スーパーボウルで本格的なマーケティング戦略を実行すれば、コストは1000万ドル(約11億円)を優に超えるだろう。
加えて、スーパーボウル広告は多くの人の目にさらされるため、問題を生む可能性もある。人々を二分するような広告を流せば、容易に怒りを買ってしまう。近年は、保険会社のネーションワイド(Nationwide)や建材企業の84ランバー(84 Lumber)、民泊仲介企業のホームアウェイ(Homeaway)、ドメイン名登録サービス企業のゴーダディ(GoDaddy)などが、スーパーボウルでの宣伝を巡り厳しく批判された。
2018年は、広告主はこれまでにない複雑な課題の数々に直面している。大きな問題の一つは、NFLで頻発する抗議活動だ。人気選手のコリン・キャパニックは2016年、米国の人種問題への抗議として、国歌斉唱中の起立を拒否して片膝を付いた。この行動は他チームへと広がり、大きな論争を呼んだ。これを称賛する人もいれば、無礼だと考える人もいた。この問題についてはトランプ大統領も発言し、起立を拒否する選手は解雇か出場停止処分にすべきだと主張している。
この論争は、広告主にとっての課題をいくつか生み出した。まず、今年のスーパーボウルで抗議が行われる可能性だ。そうなれば、話題が試合や広告からそれてしまいかねない。また、こうした抗議行動をリーグが容認(または非難)すれば、リーグを支援する広告主も大衆の攻撃対象となる恐れがある。