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3. 新しい世界に足を踏み入れ、体験し、学び続ける

実母の近くにいたいという思いから、長年の海外での生活に終止符を打ち、母国シンガポールに戻ってきたクリスティーナさんでしたが、そこでそのまま静かな生活に終わらないのが彼女の真骨頂です。

せっかく帰ってきたからには何か世の中に意味のあることをしたい。そんなことをぐるぐると考える日々のなかで頭に残ったのが「スタートアップ」という言葉。まさにシンガポールではゼロからのスタートだった彼女にふさわしい言葉、それが新たな人生の幕を開くキーワードともなりました。

「スタートアップと聞いて、なんとなく面白そうだなと思いながらも、それがなんなのかはまったく知りませんでした。そんなとき、世界最大級のスタートアップの祭典といわれる「Slush Asia」に参加しました。そしたらビックリ。国内外の多くの起業家や投資家の講演があり、彼らが現在取り組んでいるビジネスやそこから見えるこれからの世界のことを聞くことができたのです」

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2017年に行われたSlush Singaporeの様子。(c) Petri Anttila

クリスティーナさんが「Slush Asia」で見聞きしたものは、すべてが素晴らしくてエキサイティングだった。ほんとうに新しい世界に足を踏み入れたという感覚を得た彼女は、そこからスタートアップについてリサーチを始め、さまざまな起業家から話を聞きます。そのなかで大きな気づきを見出すのです。

「私自身はこれまで起業の経験はありませんでしたが、所属してきた大企業では、新規事業の立ち上げや自分しかいない“ひとり部署”への配属を何度も経験していました。それらの経験を生かして、現在スタートアップ経営者たちの力になれることがたくさんあるということに気がついたのです。まさに、自分自身が探していた『世の中に意味のあること』を見つけた瞬間でした」

立ち上げから1年足らずにもかかわらず、クリスティーナさんの「Startup Asia Women」はシンガポールのスタートアップ業界で広くその名を知られるコミュニティに発展。今では新たに自身の経営する会社も立ち上げています。

「自分で新たに起業したのは、私自身も一経営者としてスタートアップ経営の経験を積んでみたいと思ったことが第一です。またその経験を通じて、コミュニティもより有益なものにできると考えているからです。この歳になっても、世の中にはまだまだ知らないことがたくさんあって、学ぶことがたくさんある、最近あらためてそう感じています」

いつでも躊躇せずに新しい世界に足を踏み入れること。そしてその世界を自分の五感を使って体験すること。そしてそこから学び続けること。クリスティーナさんの軌跡を辿っていると、これが「エイジレスに生きる」ための大きな秘訣であると気付かされます。

テクノロジーの発展により、環境や経歴、年齢などの条件に縛られずに、より自由にクリエイティブに生きていくことができる状況が整ってきました。また個人の幸せのあり方も多様化し、自分らしい生き方を選べる時代を迎えつつあります。巷では「人生100年時代」という言葉をよく耳にするようになり、ようやく日本でも、政府主導で「人生100年時代を見据えた経済・社会システムを実現」していこうというイニシアチブもとられています。

そんなときにこそ、クリスティーナさんがその人生で会得してきた「エイジレスに生きるヒント」は役に立つかもしれません。

文=小川麻奈

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