50代で起業、シンガポール女性に学ぶ「エイジレスに生きる3つのヒント」

「Startup Asia Women」の代表クリスティーナ・テオさん(Courtesy of Christina Teo)

「アラサー」や「アラフォー」という言葉のなかに、皮肉や自嘲のようなニュアンスを感じることはありませんか。いまだに女性に対して、20代が市場価値としては最高といった見方も少なくありません。

日本の社会で生きるうえで「世間からどう見られるか」は、いまでも日々の生活や人生の選択において大きな価値基準。とりわけ、「年齢相応か」という観点はその際たるものといっても過言ではありません。そうした旧弊な価値観が、無意識のうちに私たちの中に「年齢によるハードル」をつくり出し、本来ある可能性を蝕んでいるということに、日本の外で生活を始めて、初めて気づかされました。

海外でも「年齢相応か」という基準がないわけではありません。でも、私がいま暮らしているシンガポールでは、日本よりもそうした価値観に縛られず、充実した人生を生きている人たちをたくさん目撃することができるように思います。

クリスティーナ・テオさんもそんな「エイジレス」な生き方をする女性のひとり。シンガポール生まれの彼女は、現在54歳。起業する女性を支援するコミュニティ「Startup Asia Women」の創業者兼代表として、一度に数100名以上を動員するスタートアップのイベントを何度も開催し、成功させています。

いまやこの国のスタートアップ業界では、その名前を知らない人はいないコミュニティのひとつです。去年の11月からは新たに会社も立ち上げ、自ら社長としてスタートアップ企業を経営するという新しいチャレンジもはじめています。

実は、そんな彼女が、シンガポールに戻ってきたのは2016年のこと。社会人になってからのほとんどを、台湾、フランス、イタリア、香港、ニューヨークといった国外で過ごした彼女は、当初母国に戻る気はありませんでした。46歳で結婚し、その後拠点にしていた香港から帰ろうと思ったきっかけは、80歳を越える高齢になった実母の存在でした。万が一の時に備えて母と暮らそうと、夫を香港において、独りシンガポールへ戻ってきたのです。

今でこそ確固としたステイタスを持ち活躍していますが、帰国当時はまさにゼロからのスタート。自分ではなく、家族の都合での引っ越し。また海外での生活が長かったこともあり、シンガポールでの交友関係やビジネス・コネクションはなきに等しい状態でした。

でも、せっかく帰ってきたからには、シンガポールでも何か意味のあることをしたい。このような思いでクリスティーナさんを突き動かしたのは、豊富な海外生活の体験で得た「エイジレスな生き方」でした。

クリスティーナさんの人生から学ぶ「エイジレスに生きる3つのヒント」をご紹介しましょう。

1. 自分の「勝ちパターン」を身につける

クリスティーナさんは23歳で海外での仕事をするチャンスをつかみます。キャリアのスタートは台湾のコンピューター関連機器メーカーAcer。以来IBM、Yahoo、O2、CSL Hong KongなどITや情報通信関連業界の大手企業を中心にキャリアを積んできました。

彼女がこの業界に入ったのはちょうど1980年代後半、パーソナルコンピュータ(PC)が普及し始めた頃。それに合わせてインターネットが生まれ、爆発的に広がり、それがスマートフォンの誕生に繋がっていく、まさにその流れとともに歩んできました。

時代の最先端を行く業界だったこともあり、任される仕事はこれまでやったことのない仕事ばかり。30代前半でYahoo! Singapore初のゼネラルマネージャに就任し、シンガポール拠点立ち上げをすることになったときには、インターネット業界、いわゆるドットコム企業での経験はゼロ。また40歳で世界初のウィンドウズ版スマホの発売をリードしたときにも、関連する経験はゼロ。

そんななかで彼女が見出した未経験の仕事を成功に導くための秘訣は、「どんな仕事も常に当事者意識を持って取り組むこと」ということでした。
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文=小川麻奈

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