その報道が伝えられたのはファーウェイのコンシューマー・ビジネス・グループCEOのリチャード・ユーが、家電見本市「CES」で発表を行う1月8日の前日だった。交渉決裂の原因は、「ファーウェイが端末のバックドア経由で、米国人のデータを吸い上げている」と懸念する米政府からの圧力だったとの見方が報じられている。
ただし、米国政府がファーウェイを危険視する一方で、欧州やアジアの当局はさほどの懸念を抱いていない。リチャード・ユーは当日のスピーチでこの話題を持ち出し、同社が創業以来直面してきた苦難の歴史について語った。同社は当初、中国でも信頼を得るのに苦戦し、日本や欧州でも同じ困難と闘ったという。
「ファーウェイは現在、世界で7000万人以上の顧客を獲得している。当社は製品のクオリティで支持を集め、我々がプライバシーやセキュリティを保護する企業であることも証明されている」とユーは述べた。
筆者の取材に匿名を条件に応えたファーウェイ社員も次のように述べた。「当社は米国での取り組みを長期的に考え、キャリアとの提携も別の機会を探っていく」
ファーウェイはここ6年で、世界3位のスマートフォンメーカーとして浮上した。2011年に同社は、その後の10年で年間売上が1000億ドル(約11兆円)の企業になるとの目標を打ち出した。2016年に同社は売上750億ドルを達成し、2017年には920億ドルを記録した。1000億ドルの達成は、予定より早く実現できそうだ。
筆者はファーウェイ社内で回覧された、ユーが2018年の成長戦略について記したメモを入手した。そこで強調されていたのは、人工知能領域への注力だった。ファーウェイはかつて、全世界をネットにつなげることをミッションとしていたが、2018年はそれをさらに一歩進め“インテリジェントにつながる世界”を目指しているようだ。
ファーウェイのAI領域への注力は、同社の最新端末「Mate 10 Pro」からも見て取れる。アンドロイド専門メディアの「Android Authority」は2017年のベスト端末に、Mate 10 Proを選んでいる。