ビジネス

2018.01.16

米国進出頓挫のファーウェイCEOの「不屈の闘志」と5Gへの期待

Photo by David Becker/Getty Images

スマートフォンの出荷台数で世界第3位の中国ファーウェイは、今年から米国のキャリア「AT&T」と提携し、フラッグシップモデル「Mate 10 Pro」の販売を開始する予定だった。交渉は順調に進んでいると伝えられていたが、直前でこの契約がAT&Tから白紙撤回された。

その報道が伝えられたのはファーウェイのコンシューマー・ビジネス・グループCEOのリチャード・ユーが、家電見本市「CES」で発表を行う1月8日の前日だった。交渉決裂の原因は、「ファーウェイが端末のバックドア経由で、米国人のデータを吸い上げている」と懸念する米政府からの圧力だったとの見方が報じられている。

ただし、米国政府がファーウェイを危険視する一方で、欧州やアジアの当局はさほどの懸念を抱いていない。リチャード・ユーは当日のスピーチでこの話題を持ち出し、同社が創業以来直面してきた苦難の歴史について語った。同社は当初、中国でも信頼を得るのに苦戦し、日本や欧州でも同じ困難と闘ったという。

「ファーウェイは現在、世界で7000万人以上の顧客を獲得している。当社は製品のクオリティで支持を集め、我々がプライバシーやセキュリティを保護する企業であることも証明されている」とユーは述べた。

筆者の取材に匿名を条件に応えたファーウェイ社員も次のように述べた。「当社は米国での取り組みを長期的に考え、キャリアとの提携も別の機会を探っていく」

ファーウェイはここ6年で、世界3位のスマートフォンメーカーとして浮上した。2011年に同社は、その後の10年で年間売上が1000億ドル(約11兆円)の企業になるとの目標を打ち出した。2016年に同社は売上750億ドルを達成し、2017年には920億ドルを記録した。1000億ドルの達成は、予定より早く実現できそうだ。

筆者はファーウェイ社内で回覧された、ユーが2018年の成長戦略について記したメモを入手した。そこで強調されていたのは、人工知能領域への注力だった。ファーウェイはかつて、全世界をネットにつなげることをミッションとしていたが、2018年はそれをさらに一歩進め“インテリジェントにつながる世界”を目指しているようだ。

ファーウェイのAI領域への注力は、同社の最新端末「Mate 10 Pro」からも見て取れる。アンドロイド専門メディアの「Android Authority」は2017年のベスト端末に、Mate 10 Proを選んでいる。
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編集=上田裕資

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