中国の米企業「爆買い」にストップ、米中政府がともに警戒感

Gil C / Shutterstock.com

中国アリババ傘下の「アントフィナンシャル」は米国の送金サービス企業「マネーグラム」に12億ドルで買収提案を行っていたが、米国の対米外国投資委員会(CFIUS)の承認が得られず断念した。

中国のテック企業大手らは近年、米国企業らに対し盛んにM&Aの提案を行ってきたが、それに歯止めがかけられた形だ。数ヶ月前にも中国資本の米国企業「Canyon Bridge Capital Partners」が米国の半導体企業「ラティスセミコンダクター」を買収しようとしたが、米政府はこれを認めなかった。

いずれのケースでも米国政府が懸念したのは、国家のセキュリティ上の問題だった。また、中国政府もこのところ海外への資金流出に神経を尖らせている。

中国企業の米国企業の買収にかける熱意の低下は以前からみられていた。昨年から、中国政府は企業が海外企業を高値で買収する動きを牽制していた。その例としてあげられるのが、中国のLeEco(楽視)が米国のテレビメーカーVizioを買収しようとした例や、ワンダグループが米テレビ制作大手のディック・クラークプロダクションを買収しようとした件だ。

調査企業Rhodium Groupによると、中国企業の対米投資は2017年に大きく落ち込み、年初から第3四半期までの投資額は前年比67%の減少となった。その前年の2016年に中国企業は460億ドル(約5.1兆円)の対米投資を行っており、これは2015年の3倍に達していた。

中国企業が買収対象とする米国企業は多岐に渡り、本業とは別の分野に資金を注ぐことも多い。最初はテック関連から始まり、次に不動産分野、娯楽分野に拡大していった流れは、1980年代の日本の動きを思い出させる。

ニューヨークの高級ホテル、ウォルドーフ・アストリアは2014年に中国の安邦保険に19億5000万ドルで買収された。また、中国のテンセントはハリウッドのSTXエンターテイメントに7億ドルを出資したと伝えられている。

テンセントはまた、「League of Legends」で知られるゲーム企業Riot Gamesも完全子会社化している。

編集=上田裕資

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事