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2018.01.15

日本の女の子が「料理人」でなく「食べ物屋さん」になりたい理由

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女の子は「食べ物屋さん」 男の子は「料理人」

一方、日本の女の子のなりたいもの1位は、21年連続でパン屋さんやパティシエを含む「食べ物屋さん」となった。次に、「看護師さん」、「保育園・幼稚園の先生」と続き、4位が「お医者さん」となった。5位以降は、学校や習い事の先生、歌手・タレント・芸人、薬剤師さん、飼育係・ペット屋さん・調教師、ダンスの先生、デザイナーだった。

ある小学4年生の児童は「おいしいパンを作ってお客さんを笑顔にしたい」とコメント。他にも「病気の人でも喜んで食べてもらえるスイーツを作りたい」という声もあった。

日本では、いまだに女性は料理上手であるべきとされるが、一方で「料理人」という職業は男性が目指すべきとされているようだ。料理人は男の子のトップ10に入っているものの、女の子のランキングには入っていない。

上智大学の中野晃一教授(政治学)は、女の子の野心のなさは懸念すべき問題だと語る。「女の子たちが補助的なキャリアパスに甘んじているとみられるのはなぜか。それは、日本社会が2000年代以降、性差別の問題についてまったく進歩していないからだ」

「偏見や固定概念に対抗するための真剣かつ持続的な努力がまったくされてこなかった。むしろ、『ジェンダー・バックラッシュ』が起こり、以前の状態に後退してしまった。そのため、野心を持つのは男の子、かわいくて思いやりの必要な仕事は女の子、とされている。これは腹立たしいと同時に気のめいることであり、日本の経済的地位の継続的低下をもたらしている」

安倍政権は、2012年の政権樹立以降、女性中心の経済政策「ウーマノミクス」を大々的に掲げ、日本の女性が「輝ける」社会を作ると宣言してきた。だが実体はほとんど何も変わっていない。

世界経済フォーラム(WEF)が発表する男女平等ランキングで、日本の順位は2017年に114位となり、前年の111位からさらに後退。先進7か国(G7)の中で最下位となった。

ただ、変化の兆しはある。今年の「大人になったらなりたいもの」ランキングでは、医者になりたいと答えた女の子の割合は過去最高の6.6%だった。医者は1989年の調査開始時に女の子のランキングには入らなかったものの、1993年に初めてトップ10に入っていた。

男性が医者になれるなら女性もなれるはずだ、と日本の女の子たちが気付き始めているのは素晴らしいことだ。対象的に、2015年に米国で行われた同様の調査では、女の子がなりたい職業の1位は医者(16%)だった。

編集=遠藤宗生

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