次の使命は、富裕層の課題を解決すること雄也が描く次のシナリオは、富裕層向けの不動産の仕入れ、販売だ。会社経営者、医師など高所得者層が資産運用に不動産投資を組み込む目的のひとつには、事業承継や相続税対策など早急に解決しなければならない事案がある。
「超高齢化社会に突入した日本では、いま事業承継や相続税対策に頭を悩ませている富裕層の方たちがたくさんいます。パナソニックの創業者の松下幸之助さんは、“自分たちが何をやっていいかわからないときには世間に聞け、世間は鏡である”という言葉を遺してくれました。
ビジネスとは自分が正しいと思うことをひたすらやり続けるのではなく、世の中のニーズに真摯に向き合い、答えを導き出すことだ、と私は理解しました。不動産業界にいて、目の前に大きな課題がある以上、富裕層の資産運用をお手伝いするのは、PRESIの使命だと思うのです」
PRESIグループの成長速度には目を見張るものがある。だが、まだ創業2年目の会社が、大手企業がひしめき、不動産業界で最も競争の激しいマーケットでその存在感を示すことができるのだろうか。
「プランニングはすでに立っている」と光は自信をのぞかせる。
「確かにベンチャー企業が参入できるマーケットだとは誰も思わないでしょう。私たちは創業時から自分たちで土地を買い、建設も行ってきました。不動産と建設を高い次元で両立できているベンチャー企業は、ほかに聞いたことがありません。
私たちは大手不動産会社やハウスメーカーに頼らなくてもいいほどに、取引ネットワークの構築ができています。アパートだけでなく、オフィスビルもマンションも商業店舗もゼロからつくれます。これが私たちの強みです」
雄也は、会社の進む道筋を創業前から完璧にシミュレーションしていた。例えば、創業後すぐにグループ企業を次々と立ち上げた。販売だけに専念するPRESI-X、建設を専門に行うPRESI建設、それぞれの会社の多忙な業務をこなしながら、ひとつの独立した企業体として必要なグループを構築し、次のステップに向かう準備を進めていたのだ。新たなマーケットでもPRESIが投資家から選ばれる会社になると雄也は確信している。
「ベンチャー企業だからこそ、既存の不動産会社ではできないことができることもあります。お客さまが事業承継など大きな税金対策に迫られたとき、どれだけの選択肢を用意できるかで不動産会社の価値が決まる、と私は考えています。
我々は、純資産を圧縮するために区分の物件を買うのがいいのか、あるいは一からビルを建てたほうがいいのか、市場にある情報を精査し、その人に合った診断書をつくることができます。ここまでの気配りを、大手の不動産会社がやっているとは思えません」
雄也にとっては、この巨大なマーケットへの進出も通過点にすぎないようだ。
「今期は、3本目の柱として、ワンルームマンションの仕入れと販売も行います。あらゆる投資家のニーズに応えるために、できる限りのことをするつもりです。ただし、10年後、20年後を考えたとき、人口減が進む日本で明るい展望だけをお客さまに語るのは無責任だとも思っています。
当面、首都圏の不動産市況は安定すると見ていますが、10年後にはどうなるかはわからない。ならば、海外不動産を視野に入れればいい。日本人が安心して海外不動産に投資できるビジネスモデルの構想もすでに出来上がっています」
PRESIhttp://presi.co.jp
石井雄也◎1990年、兵庫県生まれ。2012年、岩波建設に入社。収益不動産に特化した仕入れを経験したあと、14年、オープンハウスに入社。年間70件以上の不動産取引を成功させ、185億円の売り上げを達成。オープンハウスグループ初の殿堂入り社員となる。16年1月にPRESIを創業。創業1年目に17億円の売り上げを計上。自らはこれまでに1000億円近い不動産取り引きの知見ももつ。
石井光◎1992年、東京都生まれ。2015年、住友不動産販売に入社。仲介物件の営業業務を担当し、入社1年目に同期の中で売り上げ・件数ともに全国トップの成績を収める。16年5月、PRESIの物件販売会社であるPRESI-Xを設立。同年11月代表取締役に就任。