食で世界が平和になる? GABAと仏教の不思議な関係

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そんな中で最近の大発見は、蓮根です。加賀蓮根を作っている友人がいるのですが、その友人に蓮根のGABAの含有量について調べて欲しいと依頼したところ、出てきた結果はやはり……たくさんのGABAが含まれていました。

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蓮は泥沼の中に根っこを伸ばし、そこから葉をつけ、清く美しく花を咲かせる。その姿は、極楽浄土に咲くにふさわしい存在として尊ばれ、蓮の花はしばし仏教と結びついて説明されます。善と悪、清浄と不浄が混在する人間社会の中に、悟りの道を求める菩薩道にもたとえられています。

そんな蓮根をサイエンスの視点で見た結果、GABAが多く含まれていることがわかった。すると、(他にも理由があるとしても)仏教のシンボルに選ばれたのがいっそう腑に落ちる気がしますし、それを昔から仏教の花としているのは凄いことだなと思います。

最近になって注目されてるGABAですが、実は古くから人を優しく包んでくれる存在だったのかもしれません。そして、それを食べるほどに、人々がより穏やかに、世の中がより平和になっていくのではつい妄想してしまいます。

とはいえ、GABAをただ“成分として”摂取するのは、わからなくはないですが、個人的にはいかがなものかと思います。

市場からスーパー、コンビニ、さらにはネットでも食材を変えるようになり、特に都会では「旬」に出会うのが難しい時代。さらにはサプリメントも充実し、効率的に必要な成分を摂取できることは便利ではありますが、それでは季節感と同時に、食材に対する感謝の気持ちも薄れていってしまいます。気持ちを落ち着かせる「抗ストレス作用」がある成分だからこそ、季節の食材を通じて、旬の素晴らしさを楽しみながら取り入れる方がより満たされるのではないでしょうか。

今回は仏教との思わぬつながりが見えましたが、伝統的な食事や伝統的な行事の見直しは、やってみると本当にたくさんの気づきがあります。食材、調理法、食事の仕方も含めて、時代の変化の中に置き去りにされてる大切な真実を伝承、継承していくことは大切ですね。

ニース在住のシェフ松嶋啓介の「喰い改めよ!!」
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文=松嶋啓介

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