上司と部下の「信頼の距離感」を合わせる簡単メソッド

お互いを支え合う「トラストフォール」のアクティビティ


「こう扱われたい」を詳細に、具体的に伝える
 
もう一つメソッドを紹介しましょう。僕はプロジェクトを立ち上げるとき、メンバー全員が「自分の取り扱い説明書」を書きます。詳細は拙著「モチベーション革命」に詳しいのでそちらをご参照いただきたいのですが、簡潔にいうと「ビジネスシーンにおいて、自分はこう扱われると頑張れるし、こう言われると凹んでしまう」というトリセツをそれぞれ紙に書いて、交換し合うのです。
 
変化の時代ではどんな敵がどんな方向から現れるかわからないので、多様な強みを持ったメンバーがチームに必要です。そこで注意したいのは、せっかくの強みを理解し合わずに潰さないようにすることです。人の強みや心のエンジンになるものはそれぞれ違います。それらを発揮するために、自分にとって心地よいコミュニケーションのあり方を、細かく具体的に書き出し、交換し合うのです。
 
例えばチャットを使ったコミュニケーションの場合、どんなやりとりが心地いいか。たまに絵文字でフォローを入れられた方が気楽な人もいますし、あくまでビジネスライクなやりとりを好む人もいれば、必要なやりとり以外は一切せずに作業に没頭していたい人もいます。

そこで「私は簡潔なメールだけで用事を済ませるタイプです」と表明してしまえば、相手が「あれ、なんか冷たい?」「怒ってる?」などと、いらぬ推測で気疲れしたり、知らぬ間にミスコミュニケーションにならずに済みます。
 
もちろん、毎日会社で顔を合わせていて、ずっと同じチームで仕事をしていくならここまでやる必要はないのかもしれません。率直に「そこまで部下に合わせる必要はない!」と思われるのならば、おそらくトップダウンで成立する現場にいらっしゃるのかもしれないので、その場合は「確かに、ケースバイケースです」とお答えします。
 
しかし、変化の時代においては、むしろプロジェクトごとに全く知らない人とやりとりする機会も増えますし、そういったことに慣れる必要も出てきます。例え上司と部下という上下の立場でも、お互いの物差しを開示し合うことは、変化の多いビシネスシーンにおいて重要なポイントになるのではないかと僕は思います。

信頼が不安に変わるギリギリな距離を、お互いにしっかり把握した上での“強みの交換”、アイコタクトだけで相手が受け取れるギリギリの距離で受け取れるキラーパスで試合が決まるサッカーのような強みの相乗効果を生んでいきます。

ぜひ、「トラストフォール」も「自分の取扱説明書」も、ゲーム感覚で楽しんでみて欲しいです。なお、「トラストフォール」は受け止める安全性をしっかり確認した上で行うことをお忘れなく。

文=尾原和啓

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