ビジネス

2018.01.11

ふたりの賢者に聞く、「ウェルネス」であるためにすべきこと

(左) 御立尚資 ボストン コンサルティング グループ シニア・アドバイザー(中)谷本有香 フォーブス ジャパン 副編集長兼WEB編集長(右)根来秀行 ハーバード大学医学部 客員教授


意図的に楽観であれ

谷本:心の健康という意味においては、日本はかなり遅れているような気がします。例えば経営者であれば、どういったアプローチをすれば心の健康を取り戻すことができるのでしょうか。

根来:例えば、自律神経の現状を確認することが大事です。アメリカでは、企業経営者の意識はたいへん高いものがあります。彼らは小さなテリトリーの中で孤立し、そこで迅速に意思決定していかなければならないという究極の状態におかれる。要するに、彼らは交感神経が高まり過ぎる状態になりやすいということです。

実は、スポーツ選手もそのような状態になります。そこで、なかにはスポーツ選手を観察して得た知見を経営者に応用する試みも行われています。経営者の方はぜひ、健康に対する意識を高めていただき、経営者になったからこそよく歩くとか、気持ちの持ち方を工夫するとか、そういった対応が重要になると思います。

御立:やはり心の部分ですね。我々はリーダーのいろいろなスタイルを研究するわけですが、特に私は第一次南極観測越冬隊にいらした西堀栄三郎さんの話がとても好きです。彼にとって何がいちばん大事かというと、「楽観」であることなのです。

生きるか死ぬかわからないような状況になったとき、リーダーが楽観的だとチームの人たちが萎縮しないので、みんなのパフォーマンスが100パーセント発揮される。だがリーダーが悲観的だと新しい事態に対応できなくなる。これは、アムンゼンとスコットを比較し、なぜアムンゼンだけが南極探検でうまくいったのかと同じことで、やはりその通りだと思うのです。

考えてみたら、いまの世の中はデジタル化の進展を含め、急激な変化が起きている時代です。他方で我々は、物心が付いてから工業社会で生きてきて、そのなかでアメリカやヨーロッパに追いつけ追い越せでやってきた。モデルがあるなかで、先は大体読めたのです。

これがもういまでは読めないわけですよね。たぶんこの先、勝ち組は大きく変化し、アメリカ一極集中ではなくなる。いろいろなことがコロコロと変わっていく。そんなときこそ、経営者は意図的に楽観的でないと、経営を間違うと思うのです。

毎日30分間、時速6キロで歩く

谷本:生活習慣の改善で、わかりやすい身体の変化は、例えば、どのようなところに表れるのでしょうか。

根来:じつは毛細血管は健康な状態でも優劣があり、30代の若い人でもすごく血管が蛇行していて、そこから栄養素が漏れ出している人がいる。そこに正しく検証された生活習慣を持ち込み、1〜2週間続けると見事にきれいになる。これは視覚的に確認できますよ。

谷本:すごい。そうなのですか。一度ダメになってしまった血管でも、新たな血管が生成されて治ることがあるのですね。この現代日本社会で心身の健康を維持・向上させていくためのソリューションを考えると、最近ではウェアラブル端末を用いることが多くなっていますね。

根来: ええ。「WELLNESS AWARD」を主催するFiNCもそうですが、私も自分でアプリを開発しています。非常にダウンロード数が多く、関心も高いです。そこでは、利用者が少し工夫をすることで、より高いところで健康が実現できる仕組みになっています。今後はそこに報奨制度を加えたり、ゲーミフィケーションを入れたりすると、さらに充実したものになるかと思います。

御立:楽しいですよね(笑)。

根来:いかに継続するかというところがポイントになります。
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文=北島英之 写真=後藤秀二 編集=高城昭夫

この記事は 「Forbes JAPAN 日本の起業家 BEST100」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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