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テックジャーナリスト


名越がパネイルを創業したのは、12年12月。当初は太陽光発電業者向けマッチングサイトを運営していたが、電力小売自由化を契機に方向転換、パネイルクラウドの研究開発に注力していった。

名越は、ベータ版を携えてベンチャーキャピタルや電力事業者を回るが、リスクの高さや実績のなさを指摘され、資金調達はうまくいかず、導入も拒否された。電力ビジネスでは技術や価格が魅力的でも、新規導入の壁があまりにも高い。そこで実績作りのために、自ら電力小売子会社を全国8カ所に設立、地域密着の営業活動を展開した。

それらが功を奏し、プロダクトも契約書も手元にあり、電力供給初月黒字化のメドも立っていた。しかし、パネイルクラウドの電力供給開始まで1カ月をきったものの、いまだに運転資金のメドが立たない状況が名越を苦しめた。「黒字倒産」ーそんな言葉もちらつくなか、潮目が変わったのは16年3月3日だった。三井住友銀行が事業計画を評価して融資を提案。初回取引では異例の6000万円の融資が同月末に振り込まれ、4月1日0時、電気供給メーターが無事に動き始めた。

紙一重で、そんな正念場を乗り越えてきた名越は、大勢を前に号泣したことが一度ある。16年12月の「インキュベイトファンド投資委員会」のプレゼンの場での出来事だ。

「格好つけて感謝の言葉で締めようと思っていましたが、いざその段になった瞬間、これまでの苦難が走馬灯のように駆け巡り、涙が止まらなくなってしまったのです。投資家の方々からは会うたびに“今日は泣かないの”と笑われています(笑)」

最新技術で電力業界に新たな価値を提供する名越だが、その姿勢から感じるのは“泥臭さと実直さ”という言葉に尽きる。安定供給とコスト削減の両立は、電気代を押し下げるにとどまらない。パネイルの取り組みは、電力業界をオープンな風土へ変革しようとしている。

「技術で人を笑顔にしたい。高校時代から大事にしている原点の思いで走り続けています」

文=土橋克寿 ヘアメイク=内藤 歩

三井住友銀行マツダ

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