元K-1王者の経営者が語る「私がリングの上で学んだこと」

恵比寿にある小比類巻道場にて


逆に、全く自信がない、スキルが身についていないという人はじっくりと育成する必要があります。その人はパワー系なのか、テクニック系なのか、性格的に荒っぽいのか素直なのかなど、個性を見極めて良いところを伸ばすようにします。
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あとは自信をつけさせる。「いいね、素晴らしい」と褒めることも大切だし、クリアをすればもっと楽しくなってくるような機会をたくさん作っていくことも非常に重要です。

──社員に対してはどのようなコミュニケーションを取っていますか?

選手とのコミュニケーションとあまり変わりません。言葉が大事だと先ほど言いましたが、スタッフに対しても同じです。ただ数字を追って達成したから成功した、ではなくて、この仕事の意義ややりがい、格闘技の素晴らしさを伝えるようにしています。

ジムで一番大切なのは働いてくれているスタッフなので、彼らの声をよく聞いて、働きやすい環境にしたい。そのために、ミーティングの頻度を多くして現場の声をなるべく拾うようにしていますね。他の格闘ジムにはないミーティングを重ね、話す機会を増やすことで選手やスタッフの個性や強みを把握し、経営に活かしています。
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──経営者としての今後のビジョンを教えて下さい。

小比類巻道場を日本で一番のジムにしたいし、一番強い選手たちを抱えているジムでいたい。経営も選手たちも日本で一番になって、世界に行きたいです。

先日後楽園ホールにKrush(クラッシュ)という試合を観に行ってきたのですが、そこで闘っている、頑張っている若手たちを観ていて思ったんです。おそらくK-1が日本で一番盛り上がっていた頃に僕らを見ていて、同じリングに上がりたかったんだろうけど、あの時と同じ盛り上がりのあるリングはもうない。でもあの頃の自分と同じように努力しているんだよな、と。そうしたらすごく悔しくなってしまって。

残念なことに、日本ではK-1がテレビで放映されなくなって人気が衰えており、スポンサーも付きづらいため、多くの選手たちは試合だけで食っていくことができなくなってきています。一方でアメリカにはUFC(Ultimate Fighting Championship:総合格闘技の団体)があって、億を稼ぐ選手もたくさんいます。

頑張っている若手選手たちのためにも、日本で格闘技をもう一度盛り上げるべく、選手育成をはじめ、面白い取り組みをどんどん仕掛けていきたいと思っていますよ。

文=Forbes JAPAN編集部 写真=小田駿一

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