ビジネス

2018.01.08

トランプ政権が露呈する「忠誠心の限界」

Michael Candelori / Shutterstock.com

トランプ米大統領を遠くから、彼の好む色眼鏡を通して見れば、その強引なマネジメント手法はうまく機能しているようにも見える。

トランプは最高裁判事を任命し、議会で減税法案を通過させた。また、大統領令により、医療・教育・環境に関する法規制の施行を阻止してきた。こうした「ビジネス優先」の姿勢は、トランプが公約として掲げてきたもので、保守派からの支持が厚い理由でもある。

もちろん近距離から見れば、状況はより混沌としている。マイケル・ウォルフ著の新たな暴露本『Fire and Fury: Inside the Trump White House(炎と怒り─トランプ政権の内幕)』が良い例だ。同書は、大統領の仕事の癖や怒りっぽい性格、多くの人を見下していることなど、細かなうわさ話を盛り込んでいるが、こうした情報は驚きではない。

より驚きだったことはが、多くの側近が大統領を低く評価していたことだ。同著によると、ラインス・プリーバス前大統領首席補佐官はトランプを「ばかもの」と呼び、スティーブ・ムニューシン財務長官やゲーリー・コーン国家経済会議(NEC)委員長、ハーバート・マクマスター大統領補佐官(国家安全保障問題担当)もこれに同調。そしてもちろん、レックス・ティラーソン国務長官はトランプを「低能」と呼んだし、トランプが解任したスティーブ・バノン前首席戦略官は、大統領やその側近・親族を批判している。

トランプ政権は反論に躍起だ。サラ・ハッカビー・サンダース大統領報道官は同著を「ごみのようなタブロイドのフィクション」と一蹴。書籍内で自分の発言が正しく引用されていないと主張する人も既に出ているものの、これは自分の発言が気に食わなかった場合に誰しもが言うことではないだろうか。たとえ一部の引用が正しくなかったとしても、その内容はこれまで報じられていたことと一致するものだ。

ここで注意すべき点は、引用されている人物がトランプの友人や同僚、スタッフであり、彼に対して忠実であることを期待されている人たちだということだ。

しかし、現実はそうではない。2008年の米大統領選でジョン・マケイン上院議員の選挙対策委員長を務め、現在は米MSNBCテレビの評論家であるスティーブ・シュミットは、ホワイトハウスは実際には「利己的な人の集まり」なのだと語る。つまり、トランプの下で働く人は誰もが、自分の利益しか考えていないということだ。

これはトランプ自身も同じだ。彼は忠誠心を求めている。連邦捜査局(FBI)のジェームズ・コミー前長官を解任したのも、求めていた忠誠心を得ることができなかったためだ。
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編集=遠藤宗生

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