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2018.01.14

東京五輪で日本は「食の国際基準」を満たせるか

Ned Snowman / Shutterstock.com


このようにFAO基準を無視したのは国産の水産物を提供しやすいように苦肉の策を呈した結果だと推察すれば、その努力は同情に値する。我々国民もオリンピックを盛り上げるためにもオリパラ委員会を応援したい。しかし、このままでは国際社会での評価の低下とともに、水産資源の持続可能な利用への道は閉ざされるだろう。

そもそも国産水産物で資源量が高位にあるものは16.7%に過ぎず、半数は枯渇している。市場に出回る水産物の約半数はすでに輸入に頼らざるを得ない状況である。これは水産庁の発表した数字である。オリンピック村だけ90%を国産で持続可能性を確保できるというオリパラ委員会の示す数字自体に大きな矛盾があるのだ。

では、仮に日本がロンドンの基準をそのまま採用するとどうなるのか。

国際漁業認証を取得した魚種である北海道のホタテ、宮城のカキ、一本釣りカツオ、ビンチョウ、京都のアカガレイのみを提供することになる。不足分は漁業認証を取得している数ある輸入魚に依存すれば、サーモンやサバなど魚種は一気に増える。そこで国産水産物で賄いたいオリパラ委員会は苦肉の策で、現行の低く設定した調達基準を編み出したものと思われる。オリンピックほどの大舞台をこのような矛盾を抱えたままで果たして乗り切ることができるのだろうか。

いますぐやるべきことは明快だ。まずオリパラ委員会が自己矛盾を認めるべきである。そして調達基準をロンドン、リオ両オリンピックと同じくFAOの示す国際水準まで引き上げるべきである。その上で、現状では持続可能な水産物の国内調達が厳しいことを認め、2020年までにその比率を上げることを目標にあらゆる努力をする。

さらに2020年以降、たとえばSDGsの達成目標である2030年までに達成したい国内水産物の持続可能な調達の数値目標を提示し、それを達成することをオリンピックレガシーとして掲げる。と宣言するのがごまかしのない、日本のあるべき姿なのではないか。

さらに2020年までにするべきことが3つある。1つはFAOの掲げる持続可能な食糧調達基準を満たすMSC、ASCの漁業認証の取得漁業を増やすこと。2つ目は日本独自のエコラベルであるMEL、AELをGSSIの審査をクリアさせてFAO基準を達成することである。 いずれの認証も認証数を増やすことが大前提だ。そして3つ目として、ロンドンオリンピックで採用されたMCSに相当するレーティングプログラムも並行して活用するべきである。

これらすべては日本の枯渇した水産資源を取り戻し持続可能な漁業を復活させることにつながる。それは相当な努力を必要とするだろう。しかしだからこそ、オリンピックレガシーとして子供たちの未来へ繋げられる、持続可能な国産水産物の復活を応援したい。

東京オリンピック・パラリンピックは世界に日本の食をアピールする好機でもある。出汁をとるカツオも昆布も水産物。持続可能な食でおもてなしができるよう、日本も「サステナビリティ ファースト」を掲げたい。

文=井植美奈子

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