金馬奨は54年の歴史を持つ台湾の映画祭だが、受賞作品の多くは、アジアの中国語圏以外では知られていない。映画監督としてハリウッドで活躍するアン・リー(李安)が2月から金馬奨の実行委員会トップに就任するというニュースは、欧米で注目されたいと願うアジアの映画関係者にとって、喜ばしいものだろう。
台湾出身のリーは「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」「ブロークバック・マウンテン」など多数のヒット作を手掛け、米国で成功した。台湾メディアによると、リーはフェアな審査プロセスを通じ、金馬奨の存在感を高めたいと抱負を語っているという。
リーは自身が選んだ委員会メンバーとともに、金馬奨を運営するほか、中国語の映画が海外で配給会社を見つけるためのプラットフォームにも関わる。地域の映画関係者と海外の映画コミュニティーをつなぐ役割は、監督、プロデューサー、脚本家として35年のキャリアを持つリーにうってつけのものだ。
金馬奨の広報を務めるベッツィー・リャオは「アン・リー会長の映画産業にける影響力は、中国語映画を世界で広める大きな助けになると信じている」と述べた。
リーのヒット作の中には、アジアの出演者を使い、アジアで撮影された作品もある。2007年にヒットした「ラスト、コーション」、1994年公開の「恋人たちの食卓」では、主に中華系俳優を起用した。「ラスト・コーション」の興行収入6240万ドル(約71億円)のうち、460万ドル(約5億2000万円)は米国で稼いだものだ。
しかし、このような例は多くない。「血観音」の興行収入は12月4日時点で133万ドル(約1億5000万円)。主演の恵英紅(カラ・ワイ)は金馬奨で主演女優賞を受賞したが、台湾では米国のスーパーヒーロー映画「ジャスティス・リーグ」に興行収入で大差をつけられている。
映画人材を養成する大学、北京電影学院教授のチェン・シャンは、「中国の映画制作者は、リーから欧米とのコネクションだけでなく、映画の製作手法で多くを学ぶことを期待している」と語った。