3. アイデアはすぐ形にせよ
日本人は、完璧主義になりがちだ。日本のものづくりの巧妙さや美しさはそれゆえである部分もあるので、素晴らしいことなのだが、反面、組織において新しいことをやろうとする際には、足枷となることもある。
我々がプロジェクトを担うときは、とにかくアイデアをすぐ形にする。アイデアが完璧な段階になるまで待つ必要はないし、最初から3Dプリンターなどの高度なツールを使わなくてもいい。段ボールを切り貼りしたり、身の回りのものを活用したりするだけでも十分なのだ。
例えば最近協業させていただいた某システム会社のプロジェクトは、まだプロジェクトの途中であったにも関わらず、その段階で製作していたプロトタイプを、展示会に出展することをこちらから提案した。「まだ実験段階なのにお客様に見せてしまって大丈夫か」と不安の声が上がったが、我々は「むしろ実験段階だから見てもらうことが大事」と背中を押した。
実験の意図は、ユーザーからフィードバックを受けること。本格的に製品化して市場に出す前に、改善すべき点を知れることほど素晴らしいことはない。実際この展示会では、非常に有意義なフィードバックを得ることができただけでなく、アイデアの方向性が正しいことを確認する機会にもなった。
4. 好奇心旺盛であれ
一般的にマーケティングリサーチでグループインタビューなどをやる場合は、ある人の発言を聞いて、全体を理解しようとする。1をみて10を知ろうとする場合が多いように感じる。一方、我々はまず1を深く知る。そして、2から9に何があるかを、好奇心を持って探る。
デザイン思考の根底にあるのは、「人」だ。我々はその一人一人から得られる何かがあると信じており、大勢を見て平均化することはしない。
また組織においては、上から報告を求められるとつい結論を急いでしまうこともある。特に歴史と実績を誇る大企業の場合、社内にほとんどの知見や情報があると信じ、まっさらな状態で(仮説を立てたりせずに)インスピレーションを求めにいくことを無駄だと感じてしまうこともあるようだ。だが、たとえ同じリサーチを過去に誰かがやっていたとしても、自分自身が主観を持って新たなインスピレーション探しを行う過程で得られる学びは計り知れない。
時には自分の仕事と関係ないものや、自社の顧客層とは違う人の話を見聞きしに行くことで、課題をいつもと違う視点から見つめ、新たな発見に繋げられることもある。
我々は、大きなプロジェクトの場合はクライアントを海外に連れていき、例えば食に関わる事業なら食べ歩きをしたり、フード系ベンチャーを廻ったりもする。
サンフランシスコオフィスのフードスタジオにてクライアントと共に。
この時、「遊んでいるようで胃が痛い」とあるクライアントが吐露したが、遊んでいるような気持ちで楽しんでいるときに、もっとも人はクリエイティブになれる。子どものような好奇心を大切にしながら、仕事を楽しむことも、新しいことを生み出すときには必要だ。