ファッション、メンズスタイル、ラグジュリー


これだけの数の出展でもうんざりしないのは、知的なアートディレクションのおかげである。核となるのはコンテンポラリー・クラシックだが、「新世代のクラフツマン」「ラグジュアリーなアングラスタイル」「実験的でエッジの効いた前衛スタイル」「ジェンダーを超えるスタイル」「ニュー・スポーツウエア」など、今のメンズファッションをめぐる複雑な状況がセンスよくカテゴリー分けされ、会場の地図を俯瞰すると、一目瞭然に世界のメンズファッション状況が理解できるのだ。

このディレクションを行うために、世界中で綿密な調査が行われている。「私たちは美術館のキュレーターのような役割をしているのです」とチャンキ氏は語る。

エレガントな男性は革命よりアップグレードを好む

記者発表会後、チャンキ氏に個別にインタビューを実施。(女性服に比べ)あまり変わり映えがしないように見える男性服を扱うピッティが、毎シーズン、これほど世界中から男性たちをひきつける理由を聞いてみた。

「エレガントな男性は、革命を好みません。アップグレードを好みます。考え方においても、スタイルにおいても、少しずつ進展を重ね、選択肢を増やしていくことを好むのです。ですから私たちも、プレゼンテーションを新しく進化させていくことで、そうしたニーズに応えています。ピッティが提示するのは、よりよい人生への希望なのです。ここに来ると現代の最高ものを通して、希望を見ることができる。希望は、“事実”よりも強力なのですよ」

フォーブス ジャパンの読者にも多い30代から40代の起業家には、スーツを着ないという方も少なくない。そうした服装の変化については、「クラシックなスーツが着られなくなっているのは、世界的な現象かもしれませんね。富裕なITビジネスマンの中には、フォーマルなスーツよりも肌ざわりのいい上質なTシャツのほうにラグジュアリーな価値を見出す方も多いです。それはそれで現代のトレンドでもあり、よいのです」とチャンキ氏。

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(c) AKAstudio - collective

その上で、「スーツに親しんでいただくためには、まずはスーツにそんなTシャツやスニーカーといったスポーティーなアクセサリーを合わせることから始めてもらってもいいかもしれませんね。スーツの良さに対する感受性が磨かれれば、いずれフル装備のクラシックなスーツを着る喜びを見出すようになるものです」と着こなしについて助言する。

「服装というのは、ことばと同様、親世代から子世代へと教育されるべきものです。友達に対する言葉と、先生に対する言葉の使い分けができるように、状況に応じた服装を自在に着分けられる、そんな成熟した大人の男性をめざしてほしいですね」と語ってくれた。

常に同じ服装を貫くジョブズ流も悪くないが、活動の舞台が広がるとともにスタイルの選択肢を増やしていくこともまた、人生の喜びの一つとなる。ピッティにはそんな喜びに彩られた人生や世界への希望が、戦略的に、時に挑発的に、散りばめられているのだ。

文=中野香織

デルマツダ

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