──最初にプラットフォームを始めた会社が有利になるシェアリングエコノミーで、後発組は不利ではないでしょうか。
それはビジネスによります。ウーバーのようなビジネスでは、ドライバーと乗客を早く確保することも重要ですが、ビジネス自体はとてもローカルです。そのようなサービスでは地元であることが有利になり、チャンスがあると思います。
しかし、エアービーアンドビーと競合するサービスをつくるのは困難でしょう。提供するのは地元ですが、観光客は世界中から来るので、東京に特化した民泊は成り立ちにくいです。東京だけでなく、大阪や京都、他の都市にも同時に行きたいと思うでしょう。日本には国内旅行者の需要があるので、機会はあります。ただ、日本に特化した民泊でも、難しいのは提供者の確保です。
もし私がウーバーのようなサービスを立ち上げたいと思ったら、運転手を1万人集めればできると思います。しかし民泊のプラットフォームを作るには、東京に5000、大阪に5000、京都に3000……というように日本中にホストを確保しないといけない。そして時間がかかる。他人を自分の家に泊めるのは、誰かを車に乗せるよりもハードルが高いものです。
エアービーアンドビーは、シェアリングエコノミーのどのプラットフォームと比べても、先行者として大きな利点があります。しかし送迎、清掃、配送など多くのサービスは小規模なローカルビジネスで、地元の起業家にとってチャンスは大きいでしょう。
──日本に期待できるのはどういった点でしょうか。
来年6月の規制緩和がされれば、民泊は爆発的に成長するでしょう。日本に期待しているのは、都市部の交通サービスにおいて日本の起業家が日本に最適化したプラットフォームを構築することです。そして、日本政府がそういったプラットフォームの発展のために規制を変え、日本版のサクセス・ストーリーができればいいと思います。
来年以降、正社員もフリーランスとして副職ができるようになれば、フリーランスの労働を提供するプラットフォームに供給が増えるでしょう。すでに多くの人が実は副職をしていますが、フリーランスのプラットフォームは合法化されていないので使われていません。
アルン・スンドララジャン◎ニューヨーク大学経営大学院(レナード・N・スターン・スクール)情報科学・オペレーション科学・経営科学科教授。シェアリングエコノミーの第一人者として、積極的に著述やメディア活動をしている。