個人の活用できていないモノや余剰時間のサービスをユーザーと共有するシェアリングエコノミーが世界で広がっている。その際に重要な「信用」を提供しつつユーザーと提供者をつなぐのがエアービーアンドビーやウーバーなどプラットフォームだ。
「シェアリングエコノミー」の著者で、ニューヨーク大学スターン・スクールのアルン・スンドララジャン教授は民泊解禁で日本にブームが来ると予測する。シェアリングエコノミーは日本のビジネス界にどんなチャンスをもたらすのか? 同教授にシェアリングエコノミーの最新動向と日本の可能性を聞いた。
──教授は2015年に同著を上梓されました。その後のシェアリングエコノミーの最新動向について教えてください。
シェアリングエコノミーの中でも、いわゆる民泊やライドシェアの分野が最も速く成長しています。この流れは続くでしょう。今規模は小さいですが、専門職サービスの分野も今後5年で大成長が見込まれています。法律コンサルや会計、コンピュター・プログラミング、PRなどの専門職サービスのプラットフォームが続々とできました。
デジタル・プラットフォームに特化したこの本では取り上げませんでしたが、WeWorkに代表されるコ・ワーキング産業も飛躍的な成長を遂げました。この本のシェアリングエコノミーの定義には入りませんが、デザインのプラットフォームを作って、それを不動産に応用することで業界に大きな変革を起こしています。
2015年から現在までにWeWorkの企業価値は、同じ期間にウーバーの企業価値が下落したのとほぼ同じ金額、上昇しました。面白いことに米ウーバーテクノロジーズ日本法人社長はWeWorkに移籍しています。象徴的な出来事です。
──シェアリングエコノミーのプラットフォームでは、会ったことがない人がフェイスブックやユーザー評価、その他のデジタル情報を使って「信用」して取引をします。日本のような高齢化社会では、シェアリングエコノミーを広めるのは難しそうです。
どの国でも、年齢が高いほどシェアリングエコノミーを使い始めるのに時間がかかります。理由のひとつは、人々は「知っている人が使っているから、信用できる」と考えるからです。
エアービアンドビーでもフランスの長距離ライドシェアサービスのブラブラカーでも、最初の頃は「友人が使っているから」と真似しはじめた若い人によって広がりました。年齢が高ければ豪華リゾートや従来型ホテルに泊まることが多いです。しかしそれも米国では変わりました。シェアリングエコノミーで一番増えているユーザー層は55歳以上です。
つまり、普及するのに時間がかかるだけで、日本のシニア層にも最終的にはシェアリングエコノミーが広がるのは確実だと思います。