テンセントの3つの音楽アプリ、「QQ Music」「Kugou」「Kuwo」は合計で7億人の月間アクティブユーザーを持ち、ユーザーはケイティ・ペリーやリアーナといった西洋のアーティストにも親しんでいる。TMEは2018年の上場が噂されており、評価額は最低でも100億ドル(約1兆1300億円)に達するとみられている。
映画やテレビ部門でもテンセントの存在感は非常に大きい。テンセントの強みは動画コンテンツやゲーム、番組の主題歌等のコンテンツの元となる電子書籍を豊富に抱えている点だ。傘下の電子書籍部門「閲文集団(China Literature Group)」は中国のデジタル書籍市場のほぼ50%を握っている。
640万人の書き手を集める閲文集団は11月に香港市場に上場し、調達資金により映画やオンライン動画の製作を手がけようとしている。
中国の投資会社「S. Capital」のアナリストのChen Yuetianは「テンセントはIP(知的財産)を生み出すエコシステムを持っている。他の中国企業がIPを外部から購入するしかないなかで、テンセントのアドバンテージは非常に大きい」と述べた。
テンセントがIPをマネタイズする上で最も強力なプラットフォームはゲームだ。テンセントは世界最大のゲームパブリッシャーであり、同社の売上の半分以上をゲームが占めている。
閲文集団が2014年に発行したファンタジー小説「择天记(Fighter of the Destiny)」は2017年にテレビドラマ化され、2018年にはスマートフォン向けゲームがリリースされる予定だ。上海の調査企業「86 Research」は音楽コンテンツも含め、この作品から生まれる売上の合計が2018年の中頃には45億ドルに到達すると予測している。
テンセントは自社のIPでユーザーを囲い込もうとしている。音楽を聴く場合には「 QQ Music」、動画が観たいなら「Tencent Video」、電子書籍を読みたい場合は「Qidian(起点)」といった具合に、ユーザーのニーズの全てを満たす戦略だ。
動画サイトはMAU3億人
ただし、テンセントが厳しい競争にさらされていることも事実だ。オンライン動画部門ではバイドゥ傘下の「iQiYi:愛奇芸(アイチーイー)」もMAU3億人を誇り、テンセントとほぼ互角の勝負となっている。テンセントもバイドゥも、今後の成長をサブスクリプションモデルに見出している。中国の動画サブスクリプション人口は1億4400万人に達し、今後はプロが作った動画を有料で観るユーザーがさらに増加する見通しだ。
一方、3位のアリババ傘下の動画サイト「Youku Tudou(優酷土豆)」も質の高いコンテンツの獲得に注力し、先日はNBCユニバーサルやソニーピクチャーズとの複数年契約を発表した。
テンセントが描くIPのエコシステムはまだ未完成な状態ではあるが、今後は莫大な成長を遂げる可能性がある。86 Researchのアナリストは次のように述べた。
「テンセントは中国で最も包括的なエンターテインメント分野の戦略を持っている。オンライン動画市場以外では、テンセントはほぼ独占的なポジションを握っている。彼らがディズニーのようなビジネスモデルを完成させれば、巨大な市場を生み出せる」