キャリア・教育

2017.12.28 07:30

「温故知新」と「訪未来創新」で日本は復活する | 出井伸之


日本は、インターネットから新しい価値を生み出した企業を創出することもできず、90年代の金融危機以降も、過去の体質をずっと引きずり、本来ならば国が崩壊してもおかしくない状態だったのだが、なんとか維持しながらここまで頑張ってきたのだ。GDPはほぼ横ばいか、やや低下気味に留まっている。しかし、次の技術のインパクトが来る時にこのままでは、それも一気に崩れるだろう。

現状を維持するため、結果的に今の日本は、「A・B・C」(Aging Society=エイジングソサエティ、Bureaucracy=官僚制社会、Closed=閉鎖的社会)になってしまっているが、社会をなんとか安定させ踏みとどまっている。だからこそ、次に変化するための力を十分溜め込んでいると私は思う。

変革しながら、未来を創り出す

日本の未来。私は「破壊と創造」で、日本のダイナミズムを取り戻せると考えている。あっという間に「遠心力」で世界を変化させたインターネットという技術から新しいビジネスモデルが生まれたように、次の新しい技術、すなわちAI、IoT、5G通信、ブロックチェーンなどで変革を起こす時期が迫ってきている。

最も注目されているブロックチェーン技術は「求心力」のある信頼性インターネット(Trusted Internet)だ。複数の新しい技術が相互的に引き起こす変革は、日本の岩壁的な規制や社会システムを根本から変化させるだろう。

軍事から民主産業に転換し、大成長を遂げた戦後の中央集権的な官僚中心の行政システムは、この変革の時に変えざるを得ない。1990年代にインターネットが商用化された時、日本は“Beforeインターネット”の規制のまま産業をコントロールし続け、完全に世界基準の波に乗り遅れた。次は二度と同じことを起こさないようにしなければならない。産・官・学が一体となり、新しい技術に合わせた新しい基本法をすぐに準備すべきだろう。

そして日本は、現在の社会システムを第一のエンジンとして継続的にイノベーションを起こしながら、第2・第3のエンジンを創り出し、新たなビジネスモデルを確立させる。このようにして新しい日本が現われる。そう考えると千載一遇のチャンスが、いま目の前に来ているのではないか。「温故知新 と 訪未来創新」という言葉で、私はそれを表したいと思う。

おすすめしたい日本について書かれた書籍

・「西洋」の終わり(ビル・エモット著)
・文明崩壊(ジャレド・ダイアモンド著)
・100年予測(ジョージ・フリードマン著)
・アメリカ人のみた徳川家康(マイケル・アームストロング著)
・文明の衝突(サミュエル・P・ハンティントン著)

インタビュー=谷本有香 構成=細田知美 撮影=岩沢蘭 取材協力=Quantum Leaps Corporation 撮影協力=Tokyo Midtown Union Square Tokyo

タグ:

連載

出井伸之氏のラストメッセージ

ForbesBrandVoice

人気記事