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フリーランス編集者

先天的な四肢麻痺、言語障害のクライアントとエーゲ海旅行へ

高齢者や障がい者をサポートするという倫理的な営みと、「福祉をビジネスとして成功させる」という野望は、決して矛盾しない。いや、むしろ、そのふたつの思いが交差するところにこそ、日本社会における福祉の未来はある──。

要介護者など高齢者の付添い介護付き旅行事業を展開するNPO法人しゃらく代表理事・小倉譲さんの話を聞いていると、そう確信させられる。

思うように体が動かせず、徐々に心が閉じていってしまう、介護が必要な高齢者や障がい者の人々に、驚くほどのエネルギッシュさで、彼は「旅」を提供し、彼らが人生の豊かさを取り戻すサポートをしている。

「やり手のビジネスパーソン」ともいうべき手腕を発揮しながら、福祉業界を新たなフェイズに移行させようとしているパイオニアの話は、どこまでも熱を帯びている。


NPO法人しゃらく代表理事・小倉譲

──要介護者を中心にした高齢者の付添い介護付き旅行を中心事業に、オーダーメイド旅行やパック旅行、介護タクシーなど幅広く手がけていらっしゃいますが、具体的にはどのような内容なのでしょうか。

たとえば、オーダーメイド旅行の場合、しゃらくがお客さんのオファーを受けて、まずはきちんと直接お話を伺い、お体の状況やご要望を承ってから、プランニングや宿との交渉、当日の付き添いまでを全体的におこなっています。

多いのは、里帰りや故郷でのお墓参りですね。ご高齢の方は、加齢だけでなく、脳梗塞や心筋梗塞、アルツハイマー病などの様々な疾患によって、後天的に体が動かなくなっていきます。そのプロセスのなかで一番大きく損失しているのは、体の自由よりも、精神的な“自信”なんですね。

それでも里帰りをしたい、お墓参りをしたい、という思いをお持ちの方に、僕たちは丁寧に面談をして、フルサポートしますから大丈夫ですよ、と旅行全体のコーディネイトをさせていただいています。

──自信をなくされ、徐々に心が閉じていってしまいかねない高齢者の方にとっては、何よりの喜びですね。

もちろん、里帰りやお墓参りだけでなく、より幅広い旅行のプランも手掛けています。これは高齢者の方ではなく、先天的な四肢麻痺の方ですが、先日も10日間強の海外旅行にいってきたばかりです。言語障害をお持ちで言葉は喋れず、胃ろうなので食事も口からは摂れない方でしたが、エーゲ海クルーズに一緒にいってきました。



──重度の障害のある方でも、海外にも対応可能なのですね。そもそも、なぜそのような事業を手がけられるようになったのでしょうか。

もともと社会問題には意識が高く、起業への思いもあった人間なのですが、高校生のときに地元の神戸で阪神淡路大震災に遭い、ボランティア活動に参加しました。そこが私にとっての原体験だと思います。

結局、その時から、「何か自分にできること」を探していたんです。事業資金を集めようと中国に4年間留学していたころも、その後に日本の大学に入ったときも、ずっとビジネスへの思いはあったんです。

文=宮田文久

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