グーグルは、今回の防災フォーラムより前から、グーグル クライシスレスポンスを提供している。ハザード情報、防災関連情報、パーソンファインダー(安否確認)等の機能があり、世界中で活用がなされている。
この他にも、被災地情報の把握のためにドローンを飛ばしてリアルタイムに画像解析ができる技術など、新技術の防災実務への転用をビジネスとして展開する事例が紹介された。まさにビジネスとして防災を捉える動きは、自然災害多発国に属する日本企業にとって好機と言える。
日本の弱点は気候変動対策にあり
一方、今回の会議で、日本の弱点が顕在化したと思うのは、気候変動対策である。日本では、自然災害系は内閣府防災が、気候変動・CO2対策は環境省の所管になるのだろうが、各国はそれらを統一的に対応するために、防災庁や危機管理庁といった体制の構築に踏み切っている(「日本の危機管理意識が世界の常識からずれている理由」2017/6/5記事)。
また、各国が見据えていたのは超長期、2050年から2100年の社会だ。ここ数年の取り組みが、将来の21世紀後半の国益に直結するという問題意識だ。
2013年、IPCC「気候変動に関する政府間パネル」が公表した研究成果には、東京、名古屋、大阪の水没シナリオがある(もちろん他国の沿岸部の都市も同様)。確かに、2017年9月17日に鹿児島に上陸した台風18号が、観測史上初めて本土4島に上陸したことを踏まえると、IPCCの予測の中でも、より厳しい予測が現実化しているとも言える。
「気候変動のリスクは気がついた時には手遅れになる」、そのことに気付いている国や地域が積極的にリスク回避などの対策を講じている。食糧生産地の変化、降雨雪強度の変化、激甚化する風水害、住まいの再配置、産業立地政策など、そのテーマは多岐にわたっている。
今回の「世界防災フォーラム/防災ダボス会議@仙台」を機に、「BOSAIといえば日本」という確固たるプレゼンスをこれまで以上に発揮できるのか、あるいは日本のお家芸たるBOSAIがガラパゴス化して他国にアジェンダを取られてしまうのか。その分水嶺になるのではないのかと仙台で強く感じた。
蛭間芳樹による連載「想定外」の研究
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