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「想定外」の研究


防災に関する国連の会議は、1994年の初開催(横浜)から第2回(2005年、神戸)、第3回(2015年、仙台)とこれまですべて日本で開催されている。第2回までは実務者級会合であったが、第3回会議からは首脳級会議へと格上げされ、国連が開催する会議の中でも、いわゆるハイレベル会議として位置づけられている。

2015年に策定された国連SDGs(持続可能な開発目標)の都市安全や災害レジリエンス向上の考え方も、第3回で採択された「仙台防災枠組2015-2030」が基礎となっている。仙台枠組は、2015年から2030年までの防災政策上の憲法のようなものであるため、まさに仙台は防災専門家の間では聖地となっている。

COP21のパリ協定を経て、パリは、旧来からの文化芸術都市に加えて、環境とグリーンなアジェンダを牽引する都市として広く認知されている。マクロン仏大統領は、米国の環境政策変更を機に、フランスが世界の環境アジェンダを牽引すると高らかに宣言している。まさに環境を制約条件として捉えるのではなく、成長戦略として捉えて、そのグローバル・アジェンダを彼らは取りに行こうとしているのだ。

防災は、ハイレベル級の国際会議を日本が牽引している数少ない政策分野だ。「世界防災フォーラム」の狙いのひとつも、まさにこの成長戦略としての防災にある。

フェイスブックも参入する防災ビジネス

これまでの「防災世界会議」では、政府をはじめとする公的機関の参加が多かったが、今回の「世界防災フォーラム」では民間事業者の参加が多数あった。彼らの動機は、防災ビジネス市場の創造と拡大、そしてグローバル・アジェンダの獲得である。

進歩が著しいAI、IoT、ドローンなどの新技術を、いかに防災分野に適用し、ビジネスとして成立させるかの競争が始まったようにも思えた。

IBMは、ワトソンを活用した災害時の意思決定支援や、対応検証サービスを紹介した。彼らは、AIを「Artificial Intelligence(人工知能)」ではなく、「Augmented Intelligence (拡張知能)」として人間の知識を拡張し増強するものと定義した新サービスを提供している。それを防災実務に適用するというものだ。

具体的な紹介があったのが、東京電力福島第一原子力発電所事故における、映像解析からのソリューション提供だ。とくに故吉田所長に焦点を当てて、以下の観点からの分析結果の紹介がなされた。

・発言のテキスト化(何を発言したか)
・意思決定までの情報フロー(彼にどのような情報がインプットされたか)
・その後の状況変化(組織がどう動いたか)
・各種ボトルネック解明(東電本社と官邸との情報授受)
・感情やメンタル状態の変化(表情や挙動から疲労感や感情の変化)

災害対策本部などでの意思決定プロセスをビッグデータとして記録し、対応の検証や教育プログラムとして活用する技術が生まれた。

フェイスブックは、災害への備え、実際に緊急事態が発生した際の対応、そして 復旧への取り組みに、有益なツールであることを、情報支援ハブの観点から提案していた。フェイスブックの機能を災害時にも展開できるようなガイドブックも公表されている。

文=蛭間芳樹

IBMマツダ
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