ただ居心地が悪いだけの場が、面接官のせいで耐え難い場になってしまうことは非常に多い。「候補者には厳しい質問をして、極度のプレッシャーの中でどう振る舞うかを見るべき」とどこかで教わり、候補者に少し冷や汗をかかせる必要があると感じているためだ。
しかし、こうした面接は果たして現実を反映しているのか? 空の危機管理を担う航空管制官や、生死を分ける決断を下す外科医などを除き、ほとんどの人は他者と関わり、協力しながら働いている。採用面接は、その現実を反映すべきだ。
良い面接官になる秘訣(ひけつ)は、候補者の立場で考えること。特にキャリアを歩み始めたばかりの頃、自分が面接を受ける立場だったときは当たり前に緊張していたことを思い出そう。良い面接官は候補者を安心させるように努め、本来の人柄とチームにもたらす価値を引き出そうとする。
これは全て、面接官の「HELP」の能力にかかっている。「HELP」は「Homework(事前準備)」「Engagement(関わり)」「Listening(聞くこと)」「Positive attitude(前向きな態度)」の頭文字を取ったものだ。
Homework/事前準備
良い面接官は事前に候補者の履歴書を読み、ソーシャルメディアのアカウントを確認し、職歴や学歴、趣味、その他の功績など、候補者の背景を理解する準備を怠らない。候補者が事前にテストを受けた場合(上級職では必須だ)は、そのデータも事前に確認する。面接中に履歴書を机の上に置き、「経歴を一通り説明してください」と頼むことは時間の無駄なので絶対にしないこと。
事前に準備しておけば、候補者の実績やその達成手法などについて意義のある質問ができる。数日かけて複数の候補者を面接する場合は準備に時間がかかるが、適切な人材をチームに迎えたときのメリットや、不適切な人材を採用してしまったときのコストを考えれば、労力を上回る効果が得られる。
Engagement/関わり
面接は尋問ではなく、会話にすべきだ。候補者を最初から会話に巻き込み、安心させる必要がある。私は面接を受ける人を誰かに頼んでオフィスに連れてきてもらうのではなく、必ず自分から出迎え、面接前にオフィスのキッチンでコーヒーを飲まないかと提案する。
朝オフィスに来るまでの道のりや前日のフライトなど、世間話で会話に人間味を持たせれば、意義のある自然な対話の準備ができ、面接官も候補者も面接を楽しめる。また私は、机を挟んで候補者と対面して面接することはない。仕切りを置かず隣同士に座れば、リラックスして率直に会話できる。