日本人好みのビジネスウォッチとは?

ハミルトン インターナショナル、シルバン・ドラCEO|1972年生まれ。通信機器メーカーを経て、スウォッチ社に入社。2004年からハミルトン インターナショナルのセールスVPを務め、11年1月より現職。

アメリカ発祥という個性と、手に取りやすい価格帯で人気の時計ブランド「ハミルトン」。そのグローバル旗艦店1号店が、原宿のキャットストリートにオープンした。若者の街に世界初の直営路面店を構える意図を、来日したシルバン・ドラCEOに聞いた。

アメリカ生まれの老舗時計ブランド

「ハミルトンにはいつも大胆な挑戦を続けてきたという歴史があり、今もそれに忠実に守っています」。2011年からハミルトン インターナショナルのCEOを務めるシルバン・ドラは語る。

1892年にアメリカ合衆国ペンシルバニア州ランカスターで創業したハミルトンは、正確な鉄道時計やマリンクロノメーター、タフなミリタリーウォッチ、世界初の電池式ウォッチ「ベンチュラ」や世界初のLED式デジタルウォッチ「パルサー」を世に送り出すなど、常に革新を遂げてきた。

「アメリカンスピリッツ×スイスプレシジョンがハミルトンのスローガンであり、ハリウッド、エルヴィス・プレスリー、ミリタリー、パイロットなど、幅広いカルチャーを持っているのも強み。現在は本社も生産拠点もスイスですが、アメリカ発祥というルーツを大切にしている。それこそが、ハミルトンが成功している理由でしょう」

日本の幸福な関係

世界中で好調なセールスを記録しているハミルトンだが、特に日本市場を重視しているそう。

「日本のユーザーは『ベンチュラ』が好きです。これは他にはない特徴ですが、“歴史”と“独自性”を好んでいる証明でもあります。我々も日本市場の動向を常に注目しており、商品開発を行う際も参考にしています。日本市場で成功すれば、ほかのマーケットでも成功できる。これは時計業界での常識なんですよ」

それゆえハミルトンは、既存の30〜40代ビジネスマン層に続き、次なる層である18〜25歳をしっかりとつかむため、原宿キャットストリートに初の路面店をオープンさせた。ジャパンカルチャーを楽しむために世界中から観光客がやってくるこの場所に、ニューヨークのロフトをイメージした店舗を構えたのだ。


内観はニューヨークのロフトをイメージ

「18〜25歳という層はデジタルネイティブ世代であり、オンラインショッピングの方が慣れているでしょう。だからこそ、ブランドの世界観を直接感じてもらえるような場所が必要だった。時計ブランドのフラッグシップショップというと、重厚で敷居が高いイメージですが、この店舗は大きなガラスや吹き抜けで解放感を演出し、入りやすさを意識してしています。我々にとってこの店舗は“ラボラトリー”。ユーザーと触れ合い、新たなインスピレーションを得る場所として新しいことにチャレンジしていきたいですね」

ブランドを支えるために先人に学ぶ

幅広い個性と重層的な歴史を持つハミルトンは、スイス時計業界の中でもかなり特殊なブランドだ。このブランドをかじ取りしていく上で、シルバン・ドラが心掛けているのが、偉大な先人に学ぶこと。ブランドが積み上げてきた歴史や伝統を大切にするのはもちろんだが、経営者の先輩たちにも敬意を払っている。

「ハミルトンが属するスウォッチ グループには、多くの時計ブランドがありますが、CEOはみなベテラン揃い。ブランドごとに経営は独立していますが、それでもグループのミーティングなどで顔を合わせることも多く、そのたびに刺激を受けています」

「特にロンジンのCEOを長年務めているウォルター・フォン・カネル氏には尊敬の念を抱いています。私よりも31も年上ですが、柔軟な考えを持っており、新しい事に積極的に挑戦しているというのが素晴らしい。彼らに学んだことはたくさんありますが、最も大切したいのは時計ビジネスの醍醐味ですね。“情熱が詰まったモノ”を提供するという喜びは、何にも代えがたいことです」

ビジネスパーソンこそハミルトン

ハミルトンの中心価格帯は20万円前後。それゆえ、それなりに仕事で実績を積んだビジネスパーソンは、もうちょっと上の価格帯のブランドを狙うことだろう。しかし、それはあまりにもセオリー通りである。

「ハミルトンの時計は決してコモディティ化しない。それはアイデアやひらめきに満ちた、イノベーティブなモノだからです。その典型が日本市場でも人気の高い『ベンチュラ』。デザインもテクノロジーも、50年代を代表するプロダクトといえるでしょう。革新的でありながらピュアな美しさもある。その魅力は、誕生から60年たった現代でも色褪せることはありません。この時計をつけることで、キャラクターを強く演出できるので、ビジネスパーソンの時計としても適しているのではないでしょうか」

数多くの時計が販売されている時代だが、ハミルトンや「ベンチュラ」の個性は別格。自己主張のためのビジネスウォッチとして選ぶ価値はありそうだ。



ベンチュラ|世界初の電池駆動式腕時計として、1957年に誕生。左右非対称のデザインを手掛けたのは、工業デザイナーのリチャード・アービブ。エルヴィス・プレスリーが愛用したことでも知られる傑作は、その姿をほとんど変えることなく、今も人気を保っている。[クオーツ、SSケース、ケースサイズ縦50.3×横32.3mm、91,000円 問:ハミルトン/スウォッチ グループ ジャパン 03-6254-7371]


ハミルトンブティック 東京 キャットストリート
営業時間:11:00〜20:00
定休日:不定休、1/1
所在地:東京都渋谷区神宮前6-14-5
電話:03-3400-1181

文=篠田哲生

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