ネーミングはクルマの人気を左右するか? 「Q・R・X」の威力

レクサス LC500

日本でも、クルマという工業製品にはたいていアルファベットで名前がつけられる。英語のネイティブ・スピーカーとしては、日本のクルマの名前を見てびっくりしたり、ニンマリしたり、笑ってしまうことが結構ある。ちょっと困ったネーミングもあるけれど、上手いなぁと感心する呼称もある。今回は、そういうクルマの名前について、話してみよう。

なんと言っても、日本から生まれた自動車の名称で、最高傑作と言えるのは「LEXUS(レクサス)」だろう。この言葉を読んで、舌先からこの音がこぼれる時に、英語ネイティブとして感じるのはラグジャリーさ、スピード、高級感、そしてセクシーさだ。

JDパワーなどの消費者満足度調査で、毎年トップ3にランクインしているLEXUSは、世界中が日本発の高級車ブランドだと知っている。ゆるぎないが、このネーミングに日本らしさは感じない。高級車には、信頼感と共にセクシーさが求められる。英語だとエキゾティックとも言えるけどね。その点、LEXUSは絶妙なネーミングだ。

“タイポグリミア”という現象をご存知だろうか? 都市伝説のようなものだけど、ヒトの目は文字の順列が違っても意味を読み取ってしまうという現象のこと。いくつかの文字を見ると、経験上知っている言葉を思い出すからだろう。「ひつまぶし」と見ると「ひまつぶし」と読んでしまう類いの現象だ。

LEXUSの5文字から、LUXとSEXはすぐに目に入るし、経験上LとSEXを見ればヒトはLOVEを連想する。しかも「レクサス」は、ちょっとアクセントは違うけど「サクセス」に似ていると言えるかも知れない。

これに次ぐサクセスといえば、ホンダの高級ブランド「ACURA(アキューラ)」が挙げられる。1986年にアメリカで誕生したこのブランドは、いくつかのヒット車を生みだしてきた。30年以上も成功している人気のブランドでありながら、多くのアメリカ人はアキューラがどこから来たのかを知らないようだ。

レクサスと同様、世界でもっともボーダーレスなブランドであり、それが成功の理由のひとつだ。ブランド色、あるいは出身地が強調されていないと、世界でより広くアピールすることができる好例と言えるだろう。ちなみに、ACURAはAccuracy (精度)を連想させて、信頼感をアピールできているのではないかと思う。


アキューラ NSX

全世界、どのマーケットでも日本車の名前が受け入れられるとすれば、三文字のネーミングがベストではないだろうか。

例を挙げてみると、NSX、GT−R、WRX、RX−7、MX−5、そしてEvo。どれもヒーロー・カーであり、世界中に信者とも言えそうな熱狂的なファン、崇拝者がたくさん存在する。スポーツカーに詳しくない読者のために記しておくと、これらの三文字は、ホンダNSX、日産GT-R、スバルWRX、マツダRX-7、マツダMX-5。そしてEvoといえば、世界中のクルマ好きは三菱ランサー・エボリューションだと知っている。

それがこのスタイルのネーミングの妙だ。覚えやすく、だれでも発音しやすい。ここまでは、アキューラをのぞけば、すべて「X」の威力だと言える。そして、「R」もレーシングを連想させる文字として一役買っている。
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文=ピーター・ライオン

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