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2017.12.24 10:30

「伝統のレシピ」を紐解いてみるとわかること

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なぜ僕が食の歴史にこれほど興味を持つようになったかというと、ニースの伝統料理に出会ってちょっとした疑問を持ったことがきっかけです。

少し前までは、地元の食材を使って料理をすることをシェフの価値と考えていました。より新しい料理をつくり、クリエイティブに仕事をするべく、地元の生産者を訪問して食材を探しをしたり、ニースで伝承されてきた昔のレシピを見てインスピレーションを探したり……。そんな時、ある一つのレシピを見て、この問いに思い当たりました。

「地中海には泳いでいない鱈がなぜニースの伝統料理なのか?」

以下がその料理、「ストックフィッシュ」のレシピです。前回の記事でも少し説明をしましたが、このレシピから、ニースが様々な国に支配され、帰属してたかがわかります。

【Stockfish|ストックフィッシュ】
・50g de tripettes de stockfisch ── 干し鱈の胃袋 50g
・2 oignons blancs éminces ── 新玉ねぎ 2個
・3 poivrons rouges ── 赤パプリカ 3個
・2 poivrons jaunes ── 黄パプリカ 2個
・8 tomates bien mûres ── 熟したトマト 8個
・1 gousse d’ail haché ── 刻んだニンニク 1個
・1 branche de thym ── タイム 1枚
・1/2 feuille de laurier ── ローリエ 1/2枚
・12 olives noires de Nice ── 黒オリーブ 12個
・4 perugine(saucisses niçoise pimentees) ── サラミ 4
・1 cuil à soupe de vinaigre de xérès ── シェリー酒酢 小さじ1
・fleure de sel ── 塩の花
・huile d’olive pour cuisson ── オリーブオイル
・1l de fond blanc de volaille ── チキンブイヨン 1リットル
・piment d’Espelette en poudre ── エスプレット唐辛子

どういう料理かというと、干し鱈の煮込み料理です。玉ねぎ、トマト、パプリカ、ニンニクなどの野菜とハーブと鱈の煮込みで、昔はよく食べられていたけど、最近は匂いがキツいということもあって、家庭で作られることはほとんどなくなりました。

干し鱈が戻すのに1週間近くかかるということもあり、地元の人にこの料理の話を聞くと「昔はトイレのタンクの中に1週間おいていたから、トイレに行くたびにあの香りをかいたもんだ」と、おかしなお話を教えてくれます。実際この料理をニースの昔ながらのお店で食べることがあるのですが、まー、かなりの癖があります。好きになれるかというと……時間がかかります(笑)。初めての方はお勧めできないです。

え
干し鱈を水に戻すとこんな状態に。

ただ、クセを上手に活かすように自分で作ってみると、これが非常に美味しいんです。干し鱈の持っているうま味成分は本当に素晴らしく、またそれに絡む野菜の香りとサラミの味がなんとも言えない複雑味になってくれる。とてもコクがあり、繊細で、うちの人気メニューの一つでもあります。

こうして地域に馴染んでいるこの料理ですが、ではなぜ、「地中海には泳いでいない鱈が、伝統料理なのか」です。
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文=松嶋啓介

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