「伝統のレシピ」を紐解いてみるとわかること

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ニースの歴史、地中海の歴史を勉強をしていると、干し鱈や塩鱈などは、地中海交易による北欧からの輸出品として、ポルトガル、スペイン、フランス、イタリア、地中海エリアにたくさん存在する事がわかりました。どうやって伝わったかと言うと、これが面白くて、バイキングなんです。 

バイキング(ノルマン人)は航海技術が長けていて、北欧からはるばる地中海まで移動。交易したり、地中海の君主や有力貴族の傭兵として仕えたりしながら、地中海エリアに建国、定住化してきています。ご存知の通り、初代シチリア王もバイキング。だからなのか、シチリアには目が青い人が多いような気がします。

そしてその結果、スペインもフランスもイタリアも、鱈が泳いでいない地中海に面しているのに伝統料理として鱈料理があり、毎週金曜日には宗教の一環として魚料理を食べる伝統「魚の日」が根付いています。

レシピは「人が生きるために考えたノウハウ」

こうして伝統レシピを紐解いていくと、非常に面白いのです。今食べているものを通して、生産者や料理人のこだわりとはまた違う、ルーツやアイデンティという側面に触れることができる。

ヨーロッパに長く住み、いろんな地方を観光し訪問し、さまざまな伝統的な料理を食べてきて僕が思うのは、レシピとは「人が生きるために考えたノウハウ」だということ。レシピに込められた過去からのメッセージには、土地の歴史や気候風土などたくさんのことが詰められています。

そこで重要なのが、そのメッセージに気付けるかどうかです。美味しいものが好きだから、美食家だからと言って、表面的な料理の味や香りの官能的な部分を感じるのではなく、どうやって作られたのか? どうして生まれたのか? などのオリジンの部分に触れてみる。さらに言えば、その食事を人と分かち合いながら味わうことで、そのメッセージを未来に対して実らせていくこと、文化を育んでいくことが重要ではないかと思います。そのためにも、食事での会話は欠かせません。

何気なく食べているものも、視点を変えて見ると、土地の歴史や気候風土などを勉強でき、食欲という煩悩に対する喜びだけではない、教養を得ることができます。料理とは理を計るとも言いますが、いろんな理を学べるのでは? と思っています。

文=松嶋啓介

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