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2018.01.01 12:30

異端、逆張り、常識を変える ピーター・ティールを超えた男

ブライアン・シンガーマン ファウンダーズ・ファンド パートナー


あるスタートアップの立ち上げに失敗したあと、シンガーマンはグーグルに入社し、ポータルサイト「iGoogle」の開発に参画する。彼が格闘ゲーム「ソウルキャリバーII」の02年のチャンピオンだという噂は、たちまち社内に広がった。同僚にプレーを挑まれると、シンガーマンは手元に現金がある限り応じた。IPOを実施する前のグーグルにあって、同僚のなかには金欠だった者もいた。「だけど、彼らはエクイティならたんまりもっていた」と、シンガーマンは笑う。掛け金を払えない同僚たちは借用書を書き、グーグルのIPO後に持ち株の一部を売って返済するという契約を結んだのだった。
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その後、シンガーマンはスタートアップへの投資を思いたち、「XGYC」と銘打った100万ドルのファンドを立ち上げる。彼が師としたのはシード投資に長けたロン・コンウェイ(今年の投資家ランキング43位)とスティーブ・アンダーソン(同4位)だ。彼らの助力でシンガーマンは、ウェブアプリフレームワークのヘロク(Heroku)に出資し、セールスフォースが10年に同社を2億1200万ドルで買収した際、最初の大当たりを当てた。

そんなシンガーマンに目をつけたのがショーン・パーカーだった。ペイパルとフェイスブックの影響が色濃いファウンダーズ・ファンドのポートフォリオに、パーカーはグーグルの人脈を加えようとしたのかもしれない。シンガーマンは彼に口説かれ、08年に短期雇用の形でファウンダーズ・ファンドに入社する。そこで2人しかいないジュニア・インベスターの1人となり、初年度だけで1000社以上との面談をこなした。

なにより重視するのは「チームの質」
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投資家としてのシンガーマンはジェネラリスト的なアプローチをとり、なにより「チームの質」を重視する。極端にのみ込みが早く、さまざまな角度からのリサーチをいとわない彼のゲーマー的な特性が、その根幹にあるといえるかもしれない。VRのヘッドセットがいずれゲームの道具以上のものになると見ると、ほかの投資家に先駆けてオキュラスVRに飛びついた。エアビーアンドビーには、賃貸住宅を補完し拡大するはずだと大きな期待をかけた。そのほか、ファッショナブルなウェアラブル端末ミスフィット(MISFIT)や、新たな初等教育オルトスクール(AltSchool)など、多岐にわたる分野で、その慧眼を露わにしている。

低コストの医療保険を提供するオスカーヘルスとの面談では、「資料を渡して30分すると、シンガーマンはパートナーのケンを呼びだし、すぐにこれを見ろと言った」と、同社CEOのマリオ・シュロッサーは振り返る。ニューヨークから来ていたシュロッサーと共同創業者のジョシュ・クシュナーは、サンフランシスコでの滞在を1日延ばすことに決めた。そしてビール片手に、ほとんど夜を徹してシンガーマンらとオスカーヘルスについて議論した。ファウンダーズ・ファンドは後にオスカーの大口の出資者となっている。
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文=アレックス・コンラッド 写真=ジャメル・トッピン 翻訳=町田敦夫 編集=杉岡 藍

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