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ファウンダーズ・ファンドは一握りの会社に集中的に投資し、他のVCがリスキーすぎると見なす案件にしばしば投資を行うことで、同業他社とは大きく異なるポートフォリオを組み上げてきた。

フェイスブックなどに資金を投じた彼らの第1期のファンドは、投資総額の7倍の利益を上げている。第2期のファンドは音楽ストリーミングのスポティファイ、政府機関のデータ分析支援パランティア(Palantir)、スペースXなどの成功のおかげでさらに好調。それ以降のファンドもエアビーアンドビー、リフト、モバイルECのウィッシュなどに投資した甲斐あって、少なくとも帳簿上は価値が4倍になっている。05年に5000万ドルからスタートしたこのVCが、合わせて95億ドル以上のリターンを生もうとしている。

指針のひとつは「友達に出資せよ」だ。ティールはペイパルの同志だったデビッド・サックスのヤマー(Yammer、ビジネス向けSNS)や、イーロン・マスクのスペースXへの出資を主導。ティールが創業に手を貸したパランティアや、マックス・レブチンのアファーム(Affirm、決済会社)も「ファミリー」の一員だ。そのゴッドファーザーたるティールは、並び立つ者のないファウンダーズ・ファンドの顔だった。

変化の兆しは11年に訪れた。シニア・アソシエイトとして入社していたシンガーマンが、事実上ショーン・パーカー(フェイスブック初代CEO)と入れ替わる形でパートナーに昇進したのだ。

それ以降、ファウンダーズ・ファンドは再び金鉱を当て始めた。シンガーマンが出資した人工知能開発の英・ディープマインドは、14年に4億ドルでグーグルに買収された。センサーを使って天候や土壌をモニターし、農業の生産性を高めるクライメート・コーポレーションは、13年に10億ドルでモンサントに買収された。エアビーアンドビーに投じた1億5000万ドルはいまでは約14億ドルに膨らみ、決済APIストライプへの1億ドルはおよそ4倍になっている。

14年にフェイスブックに20億ドルで買収されたオキュラスVR。実は、フェイスブックの株価下落により土壇場で価格が折り合わず、白紙に戻ろうとしていたこのディールを、最終的にまとめたのもシンガーマンだ。すでに業界から絶賛されていた当時のCEOブレンダン・アイリブの携帯には、アンドリーセンやティールら大物投資家の連絡先もあった。しかし彼を救ったのは、パートナーに昇進したばかりのシンガーマンだった。

12年にはバイオテクノロジーについてほぼ知見のない同僚たちに、その可能性とチャンスを切々と説いた。その後シンガーマンが3億ドルを投じたガン治療薬開発のステムセントルクスは、16年4月に製薬大手のアッヴィに102億ドルで買収された。ファウンダーズ・ファンドはその16%を所有していた。これは同社創業以来最大のディールになった。

生粋の“ゲーマー”

ゲーム業界があと数年早く成熟していたら、シンガーマンはプロのゲーマーになっていたかもしれない。



彼は医師と教師の両親のもと、ロサンゼルスで育った。早くからプログラミングに親しみ、デジタルとアナログ両方のゲームに没頭した。1990年代には人気のボードゲーム「カタンの開拓者たち」の全米大会で優勝を飾り、ほかにもいくつものゲームのトッププレイヤーとして名を馳せた。スタンフォード大学時代にはひと夏を欧州で過ごしたが、その理由は、学業(コンピュータサイエンス)の妨げとなっていたオンラインゲーム「エバークエスト」への依存を断ち切るためだった。

文=アレックス・コンラッド 写真=ジャメル・トッピン 翻訳=町田敦夫 編集=杉岡 藍

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