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ブライアン・シンガーマン ファウンダーズ・ファンド パートナー

その男は、ペイパル・マフィアの外からやってきた。VC界の勢力図がいま、変わろうとしている。


米国で最も異端、そして逆張り派として知られる米トップVC「ファウンダーズ・ファンド」。2005年の創業以来、同社はいわば、ペイパル・マフィアの中心人物である「ピーター・ティールの一座」として知られてきた。しかし、ペイパルの外からやって来たひとりの男によって、勢力図は大きく書き換えられようとしている。

ブライアン・シンガーマン(40)。同社のパートナーのなかでは唯一の非創業メンバーながら、彼は過去5年間で、ティールを含むどの同僚よりも多くのエクジットを成し遂げた。昨年、ファウンダーズ・ファンドは同社史上最高となる14億ドルの利益を出すディールを為したが、これもシンガーマンの主導だ。フォーブスによる今年の投資家ランキングでは、昨年の36位から5位に躍進。王者ジム・ゲッツ(セコイア・キャピタル)、クリス・サッカ(ロウアーケース・キャピタル)、ジョン・ドーア(KPCB)らが次々と引退を表明するなか、VC界全体においてもシンガーマンの存在感は大きく増している。

変化の兆しは2011年に訪れた

頭角を現したタイミングも絶妙だった。ファウンダーズ・ファンドの「顔」ピーター・ティールは、ドナルド・トランプの支持者かつ助言者であり、大統領選以来、左寄りのシリコンバレーで最も批判を集める人物となった。ティールがフェイスブックの取締役会に名を連ねていることも疑問視された。起業家のなかにはティールからの出資は受けないと内々に漏らす者もいるし、一部のVCはティールとは距離を取ると明言している。

シンガーマンは論争に加わろうとはしない。「ウチの会社は概してノンポリだから」と、彼は言う。本来私的なものである政治観を会社として公的に表明する必要はあるのか、シンガーマンは考え続けている。「いま米国は恐ろしい時代を迎えている。誰もが自分は絶対に正しいと思っているんだ。正解はたいていもっと曖昧なものなんだが」。

ファウンダーズ・ファンドが論議の的となるのは初めてではない。

創業当初、同社は挑戦的なキャッチフレーズを掲げた──「他のVCが嫌いな起業家のためのVC」。ティールと共同創業者のケン・ハウリー、ルーク・ノセックは、ペイパルの創業過程で何十人ものベンチャー投資家と会ったが、感銘を受けるような投資家は皆無。自前でつくるしかないと考えたのは必然だった。02年にペイパルを売却してキャッシュを手にする前から、彼らはティールの小規模な個人ファンドに手を貸す形で、友人たちのスタートアップに投資を始める。

ファウンダーズ・ファンド──ノセックが考案した社名にもその意志がにじみ出ているが、彼らの考えるVCとは、「スタートアップの創業者(ファウンダー)と運命を共にするVC」だ。出資先に手は貸すが、邪魔はしない。資金調達のラウンドを禁じることも、会社の売却を迫ることも、取締役会の席を要求することすらもない。また、事業がつまずいても創業者に退場を強いることもない。「いまでは当然の権利に思えるだろうが、10年前にはかなりラジカルな考え方だった」と、パートナーのひとりは言う。

文=アレックス・コンラッド 写真=ジャメル・トッピン 翻訳=町田敦夫 編集=杉岡 藍

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