ミレニアル世代のお金とキャリア関連の情報を提供するザ・キャッシュロレットの調査によると、18~36歳のミレニアル世代は自分の給与額について、63%が家族に、48%が友人たちに、30%が同僚たちに教えていた。
これに対し 53~71歳のベビーブーマー世代では、家族に教える人が41%、友人、同僚たちに教える人がそれぞれ、21%、8%だった。
経営方法に関する社会通念に疑問を持つ企業のリーダーたちについて長年研究している米オーラル・ロバーツ大学のデービッド・バーカス教授はTEDトークでのスピーチの中で、次のように述べている。
「従業員の給与を公開するなどして企業内の透明性を高めることは、職場を従業員と組織の双方にとって、より良いものにすることが分かった。従業員たちの給与が公開されていない場合、自分の給与の方が少ないのではないか、自分は差別されているのではないかとさえ考える従業員が多くなる」
そのような環境では、より良い環境を求めようとする従業員が増えるのは想像に難くない。
従業員たちの給与を公開していない企業は新規に採用する人材に対しても、賃金交渉において強い立場を保つことができる。どの程度のスキルを持ち、経験を積み、資格を持っているなら給料はこの程度、という具体的な目安を持って交渉に臨めるのは企業の側だけなのだ。一方で、応募者の側が得られる情報は、給与情報サイトのグラスドアが公開している情報にとどまる。
給与が非公開であることは、従業員の賃金格差を持続させることにもつながる。同程度の資格を持った男性と女性の従業員が同様のポジションに就き、男性の方が高い給与を受け取っている場合、どちらもその事実を知らなければ、この2人の間の賃金格差はその後もずっと、企業側に都合の良い状態のままということになる。
だが、残念ながらこれは、解決するのが難しい問題だ。明白に秘密主義の文化が根付いている企業内で従業員たちそれぞれの給与額を明らかにすれば、さまざまな影響が出てくる可能性があるためだ。
組織の文化を完全に変えるための、明確な答えはない。自分の給与額を隠さないミレニアル世代の習慣がさらに広まっていくには、まだ時間がかかるだろう。まずは、私たちが従業員としての権利とは何かを知っておくことだ。ベビーブーマー世代が退職し、ミレニアル世代が管理職に就き始める中で、給与に関する秘密主義の文化も今後、より良い方向へと変わり始めるかもしれない。