カリフォルニア州では2018年元旦の合法化を前に、新しいビジネスが次々と出現した。その一方で、連邦法では大麻の所持や吸引は依然として違法であるため、大麻関連の企業が利用できる金融サービスが限られているのが現状だ。しかし変化の兆しもある。
銀行にとって、規制物質法でヘロインと同じスケジュールⅠに分類される大麻を扱う企業と取引することは、営業免許を失うリスクを孕んでいる。また、大麻ビジネスと取引する際には米国財務省のFinCen(金融犯罪を取り締まる機関)に報告しなければならない。カーンズによると、全米の銀行のうち、この報告書を提出したことがあるのはわずか5%であり、現在も大麻関連企業と取引を続けている銀行は1%に満たないという。
アリゾナ州に拠点を置く「Hypur」のタイラー・ベアーリンは、現在25以下の銀行と信用組合が少なくとも15の大麻関連企業の口座を開設しており、今後その数は増える一方だと予測する。
Hypurは、金融機関が大麻販売店の客一人当たりの購入量や購入金額を制限できるサービスなどを提供するフィンテック企業で、ベアーリンは「(金融機関や販売店が)コンプライアンス・オフィサーなどにビジネスの透明性を提示する手助けをしている」と説明する。同社の法律顧問を務めるジョン・ヴァーダマンは、2014の「コール・メモ」(米国司法省が麻薬取締の捜査官に対し、未成年への販売、犯罪組織との取引、販売店や栽培場での銃器の使用といった州法でも違法とされている行為のみを取り締まるように指示したメモ)の立案者の一人だ。
「2018年末までに、州内のすべての合法大麻のマーケットでサービスを展開したい」とベアーリンは言う。
金融機関と大麻関連企業をつなぐスタートアップは他にもある。イリノイ州の「Shield Compliance」は、銀行と大麻販売店のPOSをつないで資金の流れを記録し、会計報告書を作成するシステムを提供する。
金融サービスを利用できないせいで現金取引を余儀なくされ、セキュリティ費用が高くつくことも大麻ビジネスにとっては悩みの種だ。現金を事業所に置いていると、金庫、監視カメラ、警備員、現金輸送などの経費がかかる他、公衆の安全をおびやかす危険性がある。
人材の募集も活発化
カーンズの調べでは、事業内容を隠して銀行と取引している企業も少なくないという。また、仮想通貨を使う企業もあるが、仮想通貨は価格が不安定であると同時に透明性が低く、規制に引っかかる事例が多いとカーンズは語る。
これらの複雑な問題がある中、カリフォルニア州の大麻業界は人材を募集中だ。大麻ビジネス専門の人材紹介会社Vangstによると、同業界のフルタイム労働者の数は、2017年1月の43374人から9月の47711人に増えている。また金融機関も、公にはしていないものの、大麻ビジネスとの取引は増えているとベアーリンは言う。
司法長官のジェフ・セッションズは定期的に大麻規制を強化する声明を出しては業界を震え上がらせているが、ドナルド・トランプ大統領は財務報告のプロセスを厳格化する「上場企業改革および投資家保護法」の緩和を目論んでいると見られる。規制緩和が実現すれば、金融機関は大麻ビジネスとの取引に注力できるようになるはずだ。