ビジネス

2017.12.20

2017年は「ストーリー」型マーケティング終焉の年に

Matej Kastelic / shutterstock.com

今年は、マーケティング界が激変した年として歴史に残るだろう。

私たちは、放送広告モデルに欠陥があることをついに認め、デジタルメディアやソーシャルメディアが未来のコミュニケーションの肝だと認識した。またブランドは、放送メディアのみを通してメッセージを制御することができなくなった。ブランドは「ただ一つの声」となるのではなく、より大きなコミュニティーの集合的な考えを体現するものへと進化することが求められている。

この変化の中核にあるのは、ストーリーやストーリーテリングを重視する古い考え方を捨てることだ。情報があふれる現代では競争が激しく、ストーリーはかつてのように効果的に機能しない。米アルファベットのエリック・シュミット会長は2011年、次のように指摘している。

「5エクサバイト(50億バイトの10億倍)のデータには、世界の誕生から2003年までに人類が発した一言一句が全て保存できる。しかし2011年は、2日ごとに5エクサバイトの情報が作られていた」

現在、5エクサバイトの情報は2~3時間で作られていると推定される。インターネットは受け身の消費者を、ブランドと競合する貪欲なストーリー生産者へと変えてきた。さらに悪いことに、トランプが大統領となったことにより、ストーリーの信用性は低下している。

マーケティングに必要なのはストーリーテリングを超えた、新たな哲学だ。

コンテンツよりもコンテクストを重視

米アウトドア用品大手パタゴニアの創業者、イヴォン・シュイナードは先日、国定記念物(ナショナル・モニュメント)指定保護地域の政策変更を巡ってトランプ政権を訴えると発表。同社ウェブサイトのトップページには以下のような抗議文が掲載された。

「大統領があなたの土地を盗んだ。大統領は、ベアーズ・イヤーズ地域とグランド・ステアケース・エスカランテ地域を縮小する違法な決断を下した。米国史上、最大の保護地域縮小だ」

ここでパタゴニアが行っているのは、ストーリーテリングでも、マーケティングでもない。同社は大きな使命感を持ち、それを深く信じて、今後取るべき行動について自社のコミュニティーと共通の認識を持っている。コンテンツに注力する代わりに、コミュニティーにコンテクスト(文脈)を与えてそこに意義を見出させ、ブランドだけでは闘えない大きな問題に対して、次世代や社会のために行動を起こすよう促している。

情報にあふれ、フェイクニュースが横行する現代において、ブランドは自社の属するコミュニティーに力を与え、社会のために行動するよう人々に促す絶好のチャンスを得ている。
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編集=遠藤宗生

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