「伝統を打ち破る作品」になるか?
筆者としては、タランティーノが「スター・トレック」を撮るのであれば、同シリーズの長い伝統を打ち破る作品を期待したい。セス・マクファーレン製作・主演の傑作ドラマ「The Orville」(「スター・トレック」のパロディとオマージュが詰まった宇宙SFコメディ。2017年9月にFOXにて全米放送開始)が証明してみせたように、「スター・トレック」は独創性が高く示唆に富んだ人間ドラマのテンプレートだ。
もしも1970年代のジョージ・ルーカスが「スター・ウォーズ」ではなく「フラッシュ・ゴードン」を撮っていたら、1980年代のスティーヴン・スピルバーグが「レイダース/失われたアーク」ではなく007映画を撮っていたら、ハリウッドの歴史は変わっていただろう。
タランティーノが自身のオリジナル企画の代わりに「スター・トレック」をキャリア最後の監督作品に選んだとしても、反対する権利は誰にもない。これまでの作品で数々の映画へのオマージュをちりばめてきたタランティーノらしい幕引きとさえ言えるかもしれない。
もちろん、なかなか進捗状況が聞こえてこない「テトリス」三部作や、レオナルド・ディカプリオが製作するといわれている「キャプテン・プラネット」映画版などと同様に、タランティーノ版「スター・トレック」も実現しないことは考えられる。タランティーノにはやはりオリジナルの企画を追求してほしいと思う一方で、トレードマークであるR指定の暴力描写やFワードや辛辣な皮肉を封印し、不慣れなジャンルに挑戦する姿も見てみたいというのが筆者の願望だ。