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2018.01.03

タランティーノが撮る「スター・トレック」への期待と不安

クエンティン・タランティーノ(Photo by Gabriel Olsen / FilmMagic)

ハリウッド娯楽大作の分野でオリジナル作品を撮り続けているほぼ唯一の監督、クエンティン・タランティーノの有終の美を飾る映画が「スター・トレック」シリーズの次回作になるとすれば、これほど皮肉な話はないだろう。タランティーノはかねてより、長編10本を撮った後に映画監督業を退くと公言してきた。現在ソニー・ピクチャーズのもとで準備しているマンソン・ファミリーを題材とした新作は、9作目にあたる(「キル・ビル」2部作は1作品と数える)。

12月上旬、映画情報サイト「デッドライン」が、タランティーノが「スター・トレック」シリーズの次回作を監督する可能性があると報じた。マイク・フレミング・Jr記者によると、タランティーノは同シリーズを製作するパラマウント映画とプロデューサーのJ・J・エイブラムスに自身の構想を売り込んでおり、製作陣はタランティーノを監督に据える前提で脚本家チームを集めようとしているという。

タランティーノと人気長寿シリーズの組み合わせは一見突飛なアイデアのようだが、タランティーノは過去に007シリーズに関心を示していた時期があり、またドラマ「ER緊急救命室」や「CSI:科学捜査班」の演出も手がけた経験がある。長編3作目の「ジャッキー・ブラウン」もエルモア・レナードの小説「ラム・パンチ」が原作だった。

パラマウント映画にとっても、これは願ってもないチャンスに違いない。ジム・ジアノプスが率いる同社は、この2年近く大ヒットに恵まれていないからだ。「スター・トレック」シリーズは1本あたり1億1500万ドル(約130億円)から1億1900万ドル(約134億円)の製作費がかかる超大作だが、マーベルの人気作に匹敵する全世界興行収入は上げられていない。

「トランスフォーマー」シリーズは先行きが見えず、ジェームズ・キャメロンとティム・ミラーが進めているという「ターミネーター」のリブートも具体的なスケジュールは未定。「ミュータント・タートルズ」シリーズも大成功したとは言えず、好調なのはトム・クルーズ主演作くらいだ。

もっともタランティーノが「スター・トレック」シリーズに参戦したところで、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」並みの記録を出す可能性は低い(おそらく「猿の惑星」シリーズにも届かないだろう)。タランティーノの過去作の中で最もヒットしたのは、2012年の「ジャンゴ 繋がれざる者」(全世界興行収入4億2500万ドル=479億円)と2009年の「イングロリアス・バスターズ」(同3億2100万ドル=約361億円)で、オリジナル企画にしては健闘した方だが、クリストファー・ノーランの「ダンケルク」や「インターステラー」などには及ばない。また、過激な描写で知られるタランティーノがPG-13指定の映画を撮るという試みは興味深いものの、タランティーノと「スター・トレック」のそれぞれのファンの期待に応えられない危険性がある。
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編集=海田恭子

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