1階部分には飲食店とテラスのアンテナショップがあり、屋上はすべて緑化されている。同社のChief Communications & Sustainability Officer、アンドレア・ゲーツ氏によれば「メンバーのためだけではなく、街のデザインやサステナビリティのアイコンにもなるビルを作りたかったのです。街の景観をよくし、バンクーバーにやってくる人々が訪れたいと思う場所に、と」。
テラス社のサービスや製品が並ぶアンテナショップ。
テラスは、この区画全体の土地を所有しており、6年前からゼロベースで街づくりを計画した。同社では、オフィスは自分たちが何者であるか、どうなりたいかを反映するものだ、と考えている。オフィスが街やコミュニティと刺激し合いながら共存する様は、まさに新しい働き方を体現する。
出社した人が刺激を受けられるオフィスに
「テラスには『ワークスタイル(Work Style)』というモバイルワークの指針があり、オフィスにどのくらいいたかではなく、何を会社にもたらしたか、で評価されます。ミレニアル世代など若い社員たちの多くが、このフレキシブルな働き方を支持していることがわかりました」(ゲーツ氏)。
テクノロジーチームなど専門の部署を除き、多くの社員は、オフィスに縛られることなく、家、ホテル、コーヒーショップなどで移動的に仕事できることを望んでいた。そうなると、オフィスに求められる機能は、個人の執務スペースではなく、コラボレーションのできる場所となる。
主に大規模なテレフォン・カンファレンスを目的にした会議室。カナダ各地のオフィスとはここでつながる。
実際、新しいオフィスでは、エグゼクティブ層をのぞいてほぼすべてのデスクが固定されておらず、また常に全ワーカーの5割が自宅勤務を選択する。デスクの数そのものが限られているため、出社時は予約が必要になるが、そうした運用面の細かな部分も、最初に全社会議でディスカッションした。
「『ワークスタイル』は誰にでも、どのチームにも合うわけではない。さまざまな利害がからむ中で、移行の仕方についてバランスをとることが重要でした」(ゲーツ氏)。
テクノロジーを駆使して時代にあった働き方を促進
新オフィスには出社した人が刺激を受けられる工夫が詰まっている。「イノベーションセンター」はテラス外部からの来訪者にも開かれたスペース。テラスの新しい製品やテクノロジーを公開するほか「社会をよりよくするには」等広く意見交換を行う。
イノベーションセンター。テラス社の新テクノロジーが展示され、ゲストとのコラボレーションも期待されている。
この日はアルツハイマー病の患者が抱える問題をテクノロジーで解決する方法が議論されていた。流木を素材にしたクジラの骨格標本など、イマジネーションを刺激するアート作品も多く展示。ルーフトップガーデンではワーカーが野菜を栽培し、それを販売したお金をチャリティーに寄付しているという。各フロアには共同キッチンを設置。ワーカーが食材を持ち寄り、調理するところから食事を共にする。
ルーフトップガーデンもひとつのミーティングエリア。チームメンバーが野菜を栽培して販売、売り上げを寄付しているという。
エーオン・ヒューイット社による働き方満足度調査において、テラスは「世界で一番満足度の高い会社である」と評価された。項目はワーク・ライフ・バランス、リーダーシップ、レコグニッション(自分が認められているという認識)など。結果はチームごとにフィードバックされる。
「今後はより今の働き方が促進されていくでしょう。災害が起きたときにもフレキシブルに働く環境があることは重要です。一方で、人間のつながり、顔を見ることの大切さは変わらない。100%がモバイルワークになるとは思いませんが、テクノロジーを駆使してその方向に進むはず。経費削減や生産性、忠誠心、環境的観点など利点が多い。なにより若い世代がこうした働き方に慣れていますから」(ゲーツ氏)。
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