いくつかの計画ルートがあるうち、都心上空の新しい着陸ルートは南風が吹いている午後15時~19時に限り、東京23区を北西部から南東方向に縦断する。初台、渋谷、目黒、大井町を通過するA滑走路ルートが1時間に13便、新宿、表参道、広尾、品川、大井ふ頭を通過するC滑走路ルートが1時間に31便となる見込み。
このルート変更によって滑走路をより効率的に運用することが可能になり、1時間の発着回数は80回から90回へ。国際線の発着回数も1年あたり最大で3万9000回と、現在の1.5倍以上に増やすことができるという。
問題は具体的な「高度」と「騒音」だ。渋谷駅周辺は高度600メートルで最大74デシベル、五反田・品川駅周辺は高度450メートルで76デシベル(db)、大井町駅周辺に至っては高度300メートルだから80dbとなる。70dbといえば「掃除機の音」「電車の車内」「ステレオ」(正面1m、夜間)「騒々しい事務所の中」といったイメージ。80dbに至っては「交通量の多い道路」「地下鉄の車内」「ボーリング場」「機械工場の音」などと同等だから、相当にうるさい。
駅前など商業系地域はともかく、松濤・青山・代官山・白金・御殿山といった閑静な高級住宅街でこうした音が響き渡ることの影響はどのようなものだろうか。とりわけ昨今林立するタワーマンションの場合は、より飛行機に近い。30階建ての建物なら最上階はざっと90メートルで、騒音もそれだけ大きくなる。
国交省はこうした懸念に対し「不動産価値については、周辺の騒音等の環境面や立地、周辺施設等の地域要因だけではなく、人口の増減等の社会的要因、財政や金融等の経済的要因、土地利用計画等の行政的要因、あるいはそもそもの需要と供給のバランスなど経済情勢を含めた様々な要素が絡み合い決定される。従って、航空機の飛行と不動産価値の変動との間に直接的な因果関係を見出すことは難しい」としている。
確かに、飛行機騒音と不動産価格、とりわけ高級住宅地との因果関係は、国内には実証的なデータも研究もめぼしいものは見当たらない。