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2017.12.21

都心の高級不動産の価値を下げる「飛行機の騒音」問題

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そこでまず、ロス空港の事例を参照する。コンサル会社が94年に連邦航空局に提出の「The Impact of Airport Noise on Housing Values: A Summary Report」によると、ロサンゼルス国際空港北部の中価格帯地域で、2地点を比較すると静かな地点のほうが18.6%不動産価値が高い、1dbあたりに換算すると1.33%不動産価値が高いという結果が出た。

また「環境基準」(環境省)の基準値A及びBに基づき、環境基準は55db以下とする。これらをもとにシミュレーションすると、代官山や白金あたりの騒音は環境基準程度だから、不動産価格は最大25パーセント、大井町駅周辺では60db程度だから最大26パーセント価格下落する可能性があるといえる。

悪臭や騒音や振動などを発生させる、いわゆる「嫌悪施設」が周辺にあると、不動産価格は下落する。例えば閑静な住宅街の真ん中にいきなり工場がたてば、その影響は計り知れない。こうしたことを勘案して、都市計画法では用途地域を指定することで、主に商業系、工業系、住宅系の3つに分類し、土地利用を制限している。

一般論として、ゴミ焼却施設や下水処理場、葬儀場、火葬場、刑務所、火薬類の貯蔵所、危険物を取り扱ったり悪臭・騒音・震動などを発生させたりする工場、高圧線鉄塔、墓地、ガソリンスタンドなどが嫌悪施設に該当するが、明確な定義はない。宅地建物取引業法では、「相手方の判断に重要な影響を及ぼすこととなるもの」に関して説明義務を課しているだけだ。

ゆえに、こうした嫌悪施設から具体的に何メートルの距離にあった場合とか、どの程度の騒音の場合といった基準もない。したがって、どの程度の状況なら説明するかといったさじ加減は、不動産各社にゆだねられているのが実情だ。

飛行機騒音が不動産価格に与える影響は実際のところ、具体的に飛行機が飛んでからでないとわからない。一日中騒音がするわけでもないし、実際に飛んでみたら大して気にならなかったということになる可能性もある。ただし前述したとおり、私が懸念するのは「閑静な高級住宅街」において、とりわけ音源に近い「タワーマンション」の価値がどうなるかということだ。

文=長嶋修

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