なぜ、今「CIデザイン」なのか?


CIの歴史は浅く、日本では1980年代、社名とロゴ、その他の視覚的要素の統一活動の文脈で語られるケースが多くみられました。しかし、私たちが企業に対して抱くイメージは、見た目のデザインだけでは規定されません。経営理念や企業文化に基づいた、日々のあらゆる企業活動の結果によってアイデンティティは作られるのです。

なぜ、CIが重要なのか?

「ロゴデザイン」にフォーカスしてみると、見た目のデザイン(VI)の範疇で作られるロゴは、「その事業からどのようなシンボルが思い浮かぶか?」という連想性に依存する傾向にあります。それはデザインのアプローチとして正しいですが、それだけでは他ブランドと差別点を作ることが難しいことがあります。

そこでCIデザインの出番です。

CIデザインにおけるロゴは、ビジュアル・アイデンティティの一端であり、マインド・アイデンティティの延長線上でその要素が組み立てられます。たとえばエアビーアンドビーは「どこに居ても、どこかに属することができる」というメッセージに内包された 、“人”と“場所”の存在を“愛でつなげる”という表現でシンボル・マークをデザインしました。これらの要素は思想を起点とした、彼らだからこそ持つキーワードであり、ゆえに独創的なロゴが誕生したのです。

企業や組織には、固有の思想が内在しています。思想を適した形で言語化し、行動(BI)や見た目(VI)を定義することでブランドの土台は形成され、それらを適切に展開することで「らしさ」が生みだされます。

この連続的な思索から生まれる一貫した創作がCIデザインの強みですが、CIの観点から見る「デザイン」と世の中が見る「デザイン」の間には、いまだ大きなへだたりが存在しています。

「見た目」の話に終始しがちなロゴの話題



ロゴが世の中に出ると、そこには賛否両論の声が待ちうけています。

スターバックス、グーグル、インスタグラム……メガブランドが新たなロゴを発表すると、そのたびにたくさんのコメントが寄せられますが、その多くはネガティブな内容です。エアビーアンドビーのロゴも例に漏れず批判を受け、SNS上にはデザインを揶揄する画像があふれました。

また、遡ること2010年、米国最大のSPA「Gap(ギャップ)」が新ブランド・ロゴを発表した際も猛烈な批判にさらされ、実現すれば20数年ぶりの刷新がわずか1週間で撤回されたことは、今でも記憶に残っています。



新しいロゴを発表した2日後、ギャップはフェイスブック上で「新しいロゴについて一緒に考えよう」と呼びかけます。しかし、見た目に対する批判に対して、見せかけの対応をしても火に油を注ぐだけ。更に高まる非難のなかで、彼らに新しいロゴを押し通すだけの強い意志はなく、変更計画は白紙撤回されました。この右往左往とした態度は、単にデザインを変える以上のブランド価値の損失を招いたのではないでしょうか。

文=タカヤ・オオタ

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