時計界の歴史を変えた新しいムーブメント

グランドセイコー / SBGX321

時計が時間を知るための道具であることを考えれば当然のことだが、時計の発展と精度の追求は切っても切れないものがある。長い歴史を誇る機械式時計も、精度の追求なくして、ここまでの発展はなかったといっていいだろう。

だからこそ、1969年にセイコーによって発表されたクォーツ式腕時計は、時計界にとってとても衝撃的な出来事であった。そして、その後の時計界に大きな影響を与えることとなったのである。

では、クォーツ式は何が違うのか? 

まずクォーツ式は、機械式のテンプの代わりに水晶を用いて時間を計るのである。水晶は、電圧を加えると振動し、また、振動すると発電するという2つの特性を持っている。この特性を利用して時を刻むのがクォーツ式だ。それ故に電池が必要なのである。

そして、その振動は通常3万2768Hzに調整されている。つまり、1秒間に3万2768回振動するということである。

機械式の場合は、テンプと呼ばれる脱進機の一部を回転(振動)させるのだが、その回数が多いものほど精度が高いとされている。現在、1秒間に10振あ動もあれば機械式の最高水準の精度(振動数)ということからも、クォーツ式がいかに高精度であるかということがわかるだろう。

その精度は、1日に15秒くらいの誤差が当たり前だった69年当時に、日差±0.2秒以内という驚くべき数値をたたき出している。

さらにクォーツ式時計は、大量生産に向いていたため、比較的安価で手に入れられるのも大きなアドバンテージとなり、70年代から80年代にかけての期間、時計界を席巻した。そして、スイス時計界に存続できなくなったブランドも出てくるほどのダメージを与え、時計界そのものを変えていったのだ。

しかし、クォーツ時計のおかげで、機械式時計の特徴やその価値、良さがはっきりと認識されたのは確かで、それは、その後の機械式時計の復権と時計ブランドの再編、2000年代の世界的時計ブームへと繫がっていくのである。

現在では、長年機械式時計を作り続けてきた老舗ブランドから、ラグジュアリーブランドまで、数多くのブランドがクォーツ時計をラインナップするほどになっており、その選択肢はさらに広がっている。




グランドセイコー / SBGX321
搭載の「9Fクォーツ」は、非常にトルクが大きく、機械式時計並に大きな針を動かすことができる。柔らかな陰影を残した風防を持ったクラシックな外装も魅力的だ。[クォーツ、SSケース、37.1mm径、36万円 問:グランドセイコー専用ダイヤル 0120-302-617]

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ハミルトン / ベンチュラ
誕生から60年経った今日でも、独特の形状をしたケースは人気だ。ダイヤルには“世界初の電池式時計”を象徴するエレクトリックマークや原子”をイメージしたインデックスなどが施されている。[クォーツ、SSケース、32.3×50.3mm、9万1000円 問:ハミルトン/スウォッチ グループ ジャパン 03-6254-7371]

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ラドー / トゥルー カラーズ フォレストグリーン
ラドーならではの薄型セラミックスケースのモデル。カラーバリエーションが豊富で、このフォレストグリーンの他に、ブルー、グレー、チョコレートブラウンが用意されている。[クォーツ、ハイテクセラミックスケース、39mm径、21万円 問:ラドー/スウォッチ グループ ジャパン 03-6254-7331]

編集=福留亮司

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