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放送作家・脚本家、「くまモン」の生みの親。


もてなすという生きがいを高齢者に

実は、会社創業のころからずっとあたためている住宅販売モデルがある。高齢者の夫婦が定年後に自宅でカフェをオープンできる、「まってるカフェ」というモデルだ。

06年、僕はヨーロッパ各国で異例の売り上げを記録したフランスの絵本『MOI,J’ATTENDS…』の日本語訳に携わった。これは、ひとりの男の子の成長と人生の悲喜こもごもを「待っている」という言葉で綴った絵本で、日本語タイトルは「まってる。」とした。例えば少年は「ケーキが焼けるのをまってる。」、青年になり「運命がつながる日をまってる。」「戦争が終わるのをまってる。」、結婚して子どもをもうけ、年老いた妻が病気になったときには「心配ないですよといわれるのをまってる。」……というように人生が続いていく。

この本の翻訳をきっかけに、僕は待つことの意味について深く考えるようになった。そして、超高齢社会を迎えている現代の日本で、子どもが巣立ち、夫婦ふたりきりで大きな家をもてあますようになったとき、誰かのノックを待っている人が大勢いるのではないか、と想像した。

そこで考えたのが、前述の「まってるカフェ」である。開業資金の目処は1000万円くらいだろうか。地域の高齢者が「まってるカフェ」というネーミングと哲学のみ共有し、あとはインテリアもメニューもオリジナルのカフェを運営していく。いわば、airbnbのカフェ版。

全国に点在するそのカフェが、経営者となる高齢者夫婦やそこに集うローカルの人たちの話を聞ける拠点となり、若者がそのカフェを目指して旅をすると素敵だと思う。高齢者にとっても老後の儲けなどではなく、もてなす側の生きがいがみつかったら、すごく価値があるのではないか。できたら年に1回は全国のオーナーが集まる大会を開いて、レシピやお客様に喜ばれた事柄などをみんなで共有し、オブ・ザ・イヤーを表彰すると楽しいと思う。

この「まってるカフェ」を新しいリフォームの形として販売するのはどうだろうか、と実際にあるハウスメーカーに提案に行ったことがある。「非常にユニークなアイデアですね」とはいわれたが、残念ながら実現には至らなかった。

そこで僕はとりあえず父にやらせようかと考えたのだが、なんと父は熊本・天草ですでに似たようなことをしていたのである! その名も「めいどサロン」。由来は萌え系のメイドではなく、冥土である(笑)。「お客様の冥土のいい土産になるようにもてなすサロン」というコンセプトを立て、父は自ら「小山家」というカフェを開いた。現在も摘み草料理と料理体験ができる「めいどサロン天草壱號店吉野家」など、何軒かが天草各地で営業を続けているという。

住宅の価値とは、当然だが資産という側面だけではない。住む人にとって、豊かな時間が育まれること。みんなで知恵を絞って、そんな場を全国につくっていけたら、日本はもっと幸せになると思う。

【連載】小山薫堂の妄想浪費 過去記事はこちら>>

イラストレーション=サイトウユウスケ

不動産小山薫堂の妄想浪費小山薫堂Airbnbデル吉野家
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