ビジネス

2017.12.15

米テック業界に変化の兆し 中西部の新興企業が9億円を調達

Antonio Guillem / shutterstock.com

eラーニングサービスを提供するレッスンリー(Lessonly)を創業したとき、最高経営責任者(CEO)のマックス・ヨーダーが願っていたのは、自分たちが手掛ける学習管理システム(LMS)を、何千人かの人たちが使ってくれることだった。同社のソフトウェアで研修を受けるのは現在、世界500か国以上の企業で働く100万人以上だ。

研修用のチーム学習システムを開発・提供するレッスンリーは、米インディアナ州の州都インディアナポリスに拠点を置く。今年11月にはシリーズBラウンドで800万ドル(約9億円)を調達。利用者数を1000万人にまで引き上げようと、野心的な目標を打ち出したところだ。

同社の顧客は、「フォーチュン100」に入る多くの大企業や、NBCニュース、ビデオチャットを通じて服選びを手伝うECサイトのトランククラブ、定期的に化粧品サンプルを会員に届けるバーチボックスなど、先進的な企業だ。

ヨーダーと共同創業者たちは、LMSの多くが企業側の視点に立った魅力に欠けるものであり、労働者たちの間では不人気であったこと受け、「従業員、チーム、雇用主にとって業務上不可欠な情報を提供」することを目指してレッスンリーを創業した。

LMS市場は競争が激しい。多くの企業の人事部が採用しているのは、LearnCore(ラーンコア)やMindFlash(マインドフラッシュ)などのツールだが、グーグルドキュメントを使って研修用の資料を共有している企業もある。レッスンリーが狙うのは、これらとは全く異なる、新しい市場だ。主に販売やカスタマーサポートに関連する部署で、チームが必要とする情報をオンラインで学ぶことができるツールを提供する。こうした違いが、同社と競合他社の差別化を実現するポイントだという。

米中西部のテック業界に見る変化

事業の拡大を目指すスタートアップは、サンフランシスコのベイエリアに移転するべきだとのアドバイスを受けるこことが多いだろう。急成長するスタートアップやテクノロジー分野の経験豊富な人材が集中すること、さらにスタートアップに投資するベンチャーキャピタルがあるのは主にシリコンバレーやニューヨークであることだけから見ても、そうした助言にはうなずくことができる。

米中西部でソフトウェア会社を立ち上げた起業家たちはこれまで、会社を成長させるにあたってのいくつかの困難に直面してきた。沿岸部から離れれば、ベンチャーキャピタルからの協力を得るのは非常に難しくなる。地元では限られた資金のために他社と競い合わなくてはならず、沿岸部の投資家たちには、自社が投資に値する企業だと説得しなくてはならなかった。

人材もまた、仕事のある場所へと移動する。その結果、沿岸部以外の地域では、テクノロジー分野の優秀な人材が不足してきた。だが、生活費が高くなったテクノロジーハブの外に仕事を求める労働者が増え、これまでの傾向には変化が見え始めている。湾岸地域以外の企業が成長する地元の市場に有能な人材を取り込めるかどうかは、自分たちしだいだ。

中西部の都市は、より小規模ながら非常に魅力的な市場と生活費の安さで優秀な人材を魅了している。インディアナ州は昨年、全米で2番目にソフトウェア関連の雇用が増えた州だった。1位は中西部のもう一つのテクノロジーハブ、カンザス州だ。レッスンリーは、中西部にあるというそのルーツが、競合他社との違いを打ち出すものになると考えている。

インディアナ州で創業し、2013 年にセールスフォースに25億ドルで買収されたデジタルマーケティング企業イグザクトターゲットの元CEO、スコット・ドーシーは、中西部でテック企業を成長させることの難しさを理解している。そのドーシーは現在、地元の投資会社ハイ・アルファのマネージングパートナーであり、レッスンリーに投資する立場にある。そして、中西部の今後の成長を確信している。

レッスンリーのこれまでの成長が何らかの指標になるとすれば、中西部のテックブームは始まったばかりだといえる。

編集=木内涼子

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