2度の失敗、社員の解雇 スラックCTOが語る困難の乗り越え方

カル・ヘンダーソン スラック共同創業者兼CTO


──その当時から考えると、いまの大成功は予測できていたのでしょうか?

シリコンバレーには、“Relentless optimism”(絶えない楽観主義)があります。もし今やっていることを信じられないのなら、その時点で成功することは難しい。どんなにおかしなアイデアでも成功すると信じる文化があります。“Infectious optimism”(伝染する楽観主義)が満ちているシリコンバレーというコミュニティが、アイデアを加速させ、みんなが成功するという感覚にさせます。

私たちも、常に「必ず成功する」と信じてやってきました。それは正しい時もあれば、間違っている時もあります。特に2つ目のゲーム開発を辞めた時は、楽観的になることに嫌気がさすこともありました。でも、今回ダメだったのだから、次こそは絶対に運が巡ってくると信じていた。楽観的になることが、失敗から何かを学ぶことに繋げてくれたのだと思います。



──結果的に、スラックはいま世界中で毎日600万を超える人々が使う大きなビジネスツールとなりました。いまでもゲームづくりをしたいと思いますか?

これまでやってきてはっきりと分かることは、我々はゲームを作ることは得意ではなかったということです。だからもうゲームづくりはしないでしょう。 

今はスラックとして明確なヴィジョンがあります。私たちがスラックで大きな成功を収めることにより、世界中の働く人々に大きなインパクトを与えることができると思っています。だから当然重大な責任を感じますし、この先10年で大きく変化していく人々の働き方に関して、スラックとして新しいムーブメントを追求しないといけません。

──下した決断が良い方向へ向かう人もいれば、そうでない人もいます。カルさんと同じように熱意があって悩みを抱えている若い起業家たちに対して、アドバイスをいただけますか。

いつ機軸を変えるべきで、自分がやりたいと思っていることをやめるべきか、そのタイミングを決めるのはとても難しい。おっしゃる通り、いい決断になるかもしれないし、最悪の決断になるかもしれないですから。

私もゲーム事業をやめるのに時間がかかりました。今月はダメだったけど、来月はうまくいき始めるかもしれない、と願ったことは何度もあります。ある出来事を諦めて、次のことを始めるのがいつかは本当に難しい。でも我々は、いつでもユーザーが気に入るものを作ることに注力してきました。

アドバイスとしては、とにかく良いものを追求すること、そしてユーザーの話を聞くこと。それは非常に難しいことですが、素晴らしいことで面白くもあります。あとは、その取り組みが良い結果を導き出すことを、努力しつつも楽観的に信じることでしょうか。

文=フォーブス ジャパン編集部 写真=吉村永

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事