米国の女性エリートが「家事代行」を使わない2つの理由

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女性の社会進出や共働き家庭の増加などを背景に、日本でも家事代行サービスが徐々に浸透しはじめ、福利厚生として取り入れる企業も増えてきています。

私は2歳の娘を育てながらフルタイムで働く母親ですが、米国にいる友人たちの影響を受け、家事代行をほとんど利用していません。米国中西部にいるハイキャリアで子供を持つ友人たちが、家事代行を使わなくなってきていることに感化されたからです。

アウトソースの弊害

では、エリートたちはなぜ、忙しいのに自分たちで家事をするのでしょうか?

遡ること幼少時代、私はアメリカ中西部のシカゴ郊外で育ち、カトリックの女子校に通いました。クラスメートの大半は裕福な家庭の出身。彼女たちは乳母の手によって育てられ、使用人がすべての家事を取り仕切る暮らしをしていました。

そのクラスメートが大人になったら、育ってきたのと同じような生活をするのだと思っていました。しかし、実際はその半数以上が、自分たちで家事をこなし、住み込みのシッターも雇わず、キャリアも築いていったのです。大手金融機関の経営層になった人もいれば、米軍の高官に上り詰めた人もいます。

フルタイムでバリバリとキャリアを積みながら、複数の子どもを育てている。忙しいはずなのに、彼女たちは家事をアウトソースしないという選択をしているのです。

そこには2つの理由がありました。ひとつは、家事をアウトソースすると、子どもの生活力が育ちにくく、家事を通じて得られるスキル育成の機会を失うこと。もう一つは、自分たちの生活を楽にするために、移民や若者、中流以下階層を安く使うことは、エシカル(=道徳的、倫理的)な生き方ではないということです。

生活を通じて「生きる力」をつける

社会人となり、キャリアを突き進む人、キャリアも家庭も頑張る人、家庭を中心に生きる人など、いろいろな生き方を選んできたクラスメートですが、社会人になって10年ほど経った同窓会で集まったときに話題になったのは、「私たちはどうして人に頼らないと生きていけないんだろう?」ということでした。

洗濯機の回し方は分かるけれども、キレイにアイロンがかけられなくて、なんでもクリーニングに出してしまう。食事の作り方が分からなくって、いつもテイクアウトやレストランで食事をしている。大人なのに、1人の人間として生活を営む能力が低いと、気づいたのでした。

親の姿を見ているから使用人への頼み方やマネジメントはできるけれど、自分で家事をやろうとすると分からない。彼女たちは、自分たちが子供時代に身につけられたであろうスキルを身につけられなかったことを残念に思っていたのです。そして、「今からでも遅くはない、自分たちでやろう」と動き始めたのでした。自分の子供たちには、家事をするのに“誰かを使うスキル”ではなく、“自分でやるスキル”を身につけさせるのだ、と。
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文=秋山 ゆかり

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